爪一枚【d!】

爪、1枚目 ページ1

貴方side



『うへぇ、、また来てる。』


ポストを覗きながらそう呟く。
色々な広告のチラシの中に一つだけ、真っ白な箱が存在感を主張する。


私は数年前、親元から離れ都会の町で一人暮らしを始めた。
初めての都会や一人暮らしに戸惑いながらもなんとか生活できている。
ただ、この箱だけが異様なのだ。


『、、、捨てたい。』


この箱の中身なんて見なくても知ってる。
爪だ。
それも薬指の。


この国には、少しおかしな風習があった。
それは、「好きな相手に爪を送る」という風習だった。
元は遊女が本気になった男性に小指を切って送るという風習から爪を送るという風習になっているらしく、現代でもそれは続いている。


『正直キモいんだよね。』


私の場合、相手が誰なのか分からない。
匿名なのだ。
宛名も無いため、直にポストにいれてる、、そう考えると怖くて何度も引っ越しをした。
なのに箱は一定の期間を得て私のところにやってくる。
正直ホントにキモかった。
でも警察に言ってもどうせ風習の事で「嬉しいことだ」と話を終わらせるに決まってる。
だから半分諦めていた。


『これで8個目かぁ、、。』


数え見ると爪は３ヶ月周期で私の家に来る。
成人の爪が剥がれ、完治するまで約6ヶ月必要。
なら相手はちょうど生え変わる期間の３ヶ月毎に送ってきてるということだ。


『ほぁー、、キモい。』


むしろここまで送っても何の返答もしない私に愛想を尽かさないことの方が怖くなってくる。
いつか、凸って来たとき用に爪は取っといてある。


『、、はぁ。また引っ越し検討しないとな。』


そう良いながら自分の通帳と相談を始めた。


続く

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