2食目。 ページ3
ところ狭しと並べられている料理を羨ましそうにセレナは見る。
少しだけむすっとしながら、手に持っていたグラスの中身をくるくると回し、飲んだ。
そのとき、料理人のひとりが皿を片手に持って、にやにやと笑いながら寄ってきた。
「よぉ、セレナ。食ってるか?」
本来はちゃんとした言葉使いの彼が、小馬鹿にしたように話す。
少しだけ頬が赤く、酔っていると思われた。
自分は食べれないのに馬鹿にされたセレナはさらに機嫌を悪くして、無視するように自分の主人…メグルの元へ向かった。
部屋の隅の方で、パーティを眺めるメグルの姿は、少しだけ寂しそうに見えた。
そんな姿を見てしまったセレナは、すぐに近くへと行き、話しかける。
「ご気分が優れませんか?」
そのとき、この家の当主であるムズーリがこちらを、というよりメグルを見た。
「おや、メグル。なんだ、せっかくの料理をお前は一口も食べていないではないか。とても美味いから食べてみろ」
しかし、ムズーリの勧めに対してメグルは申し訳なさそうに首を振った。
「ごめんなさい。食べたいのは山々なのですが…やはりまだ、体調が優れなくて。」
「そう言わずに、一口だけでもいいから食べてみろ。『バエム』を食べられる機会など二度とないのかもしれんのだぞ。」
「お心遣い、ありがとうございます……では本当に、一口だけ」
メグルはそう言って、ロールキャベツをナイフで細かく切り分けて、それを口に含んだ。
「まぁ、本当に美味しい」
顔が明るくなったメグルを見て、上機嫌になったムズーリがバニカにも『バエム』を食べさせようとする。
しかし、それをメグルとセレナがほぼ同時に止めた。
それを見て、ムズーリはセレナもまた何も食べていないことに気付いた。
「おお、セレナ。お前も何も食べていないのではないか?」
セレナは困ったように眉を下げ、苦笑いをした。
「旦那様……
私は数日前に毒キノコを食べてしまいまして…」
ムズーリはハッとした表情になり、そうだったなと苦笑いをした。
パーティは、夜が明けるまで続いた。
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いんく(プロフ) - 桜猫さん» 返信遅れてしまい申し訳ありません。一ヶ月一冊ペースで進めていくつもりですので、こちらもよろしくお願いします。 (2016年8月5日 19時) (レス) id: 8afac89c30 (このIDを非表示/違反報告)
桜猫 - こちらも読ませていただきます( ^ω^ ) (2016年8月3日 11時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いんく | 作成日時:2016年8月1日 22時