あったかいお紅茶を【オリジナル】

指紋認証 ページ15

「あの娘のスマートフォンは指紋認証型だ
本人の意思関係なく、生きている限りロックが解除されるはずだ」

スマートフォンは便利だが、これでしか連絡がとれないというのは…
その…怖いな。

紕閠によると朝食をとってもらうために部屋を訪ねたら、
もうそこにあの娘の姿はなかったという

メイドに聞いても最後に見たのは遅くても昨日の夜だと。

部屋を荒らされた形跡はなかった…まぁ元から荒れてるが。
朝早くにどこかへ行ったのか?

「…紕閠、今日起きたのは何時だ?」

紕閠は不思議そうな顔をしてから
「4時半頃でしょうか…」
と思い出すように答えた


「…あの娘、いつ外へ出た」
自分の意思で外出したことまでは分かった。
靴もなくなっていて、寝巻きから着替えてもいたようだ

何故だか苛立ちが抑えられなかった
大して特別な人間ではない。あの様子だと秘密を守るだろう

「…」
部屋の空気が重くなる。朝食なんかいらない。


…秘密。




あ…そうか。




「秘密だ…」
繰り返し口のなかで呟く

「秘密がどうされましたか?」
その問いを無視して
自分の書斎に閉じこもる。


本の並びは変わっていたが、逆にしっくりくるような気がした。


あの娘の様子からすると、一般の人間もどんなものかは知らずとも
秘密のことを多少知っているようだった


気になる人間もいるだろう
欲の塊みたいなものだからな、人間は。





誘拐された…



その文字が浮かんだ途端、外へ駆け出していた。

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