虎杖悠仁の弟は無自覚に愛される

NO.1 ページ3

“じいちゃんがなくなった”


僕は部活が終わって帰りの電車に乗っているとき
この文面が兄の悠兄から送られてきていることに気づいた

このメッセ―ジが送られてきたのは
17時を少し過ぎた頃だ

今は20時30分

送られてきてから約3時間半も経っている

“悠兄、大丈夫？
　今部活が終わって電車に乗って帰ってるところ
　そっちに着くのは22時半過ぎになるけど
　すぐに病院に向かうね！”

という文面を悠兄に送り
電車の窓から外の景色を眺めた


今日は午後から、他県で練習試合が行われた
僕はバスケットボール部に所属していて
部員の皆からは“エース”と呼ばれている

他の学生は午後も授業だが
この学校のバスケ部は強豪校と呼ばれ
特別に午後の授業を免除させてもらっている


僕は窓の外を眺めながら
今日の試合を振り返り
最寄り駅に着くのを待った




.




.




22時40分、ようやく最寄り駅に着いた

すぐにタクシーを捕まえ
おじいちゃんが入院していた病院まで行ってもらう


病院に着いたのは23時だ

急いで空いている入口から中に入り
悠兄を探すものの見当たらない……

もしかして遅すぎて帰っちゃったかな、と思ったとき
何回か見たことのある
後ろの髪をお団子縛りにしている看護師さんに声をかけられた

看「あ！A君！悠仁君探してるの？
　 悠仁君なら黒づくめの洋服？を着た男の人と
　 少し会話した後急いでどこかに向かったわよ」

『そうなんですね、ちなみにどこに向かったかわかります？』

看「ごめんなさいね、わからないわ……」

『いえ、大丈夫です
　そうだ！なにか書かなきゃいけない書類あります？』

看「ないわ！悠仁君が必要な書類を全部書いてくれたから大丈夫よ」

『そうですか、お世話になりました』
僕はそう言って看護師さんにお辞儀をし
悠兄が置いていったであろう
悠兄のリュックとじいちゃんの入院鞄を持ち
外に出た
　

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