異能力の特異点 ページ4
「とてもいいバーですね。」
私がそう言うと、先輩はそうでしょう、と静か
に微笑んだ。
「先輩はどうしてここへ来るようになったんですか?見たところ、だいぶ常連のようですけど。」
私は、気になったことを1つ聞いてみる。
「────」
先輩は言葉に詰まったように返事をしなかっ
た。その目は懐かしむように、どこか遠くを見
ていた。私は触れてはいけないことだと察し、
違う話題をふる。その後、私たちは他愛ない
話をした。そこで、私はふとこの間綾辻先生と
の会話で疑問に思ったことを聞いた。
「先輩、異能力の特異点ってどのような時に起こるのですか?」
先輩は少し驚いたように瞬きをひとつした。
「…特異点は同じような異能、もしくは正反対の効力を持つ異能が同時に発動した場合に起こるとされています。」
そこまでは知っていたので、私は無言で頷く。
「例えば…そうですね。──5秒ほど先の未来が見える異能力者が戦い合えばどうなるのか──とか。」
やけに詳しい例えだ。先輩は過去にこの特異点
を見た事でもあるのだろうか?また、私はもう
一つの疑問も聞いてみた。
「綾辻先生から昔、あらゆるほかの
異能力を無効化できる異能者がいると聞きました。そんな異能者が本当に存在するのですか?そしてその場合特異点は発動するのですか?」
私の疑問に、先輩の表情が固まったように見え
た。何かいけないことを聞いてしまっただろう
か。
「あの、答えにくかったらすみません。」
そう言うと先輩は首を横にふった。
「いえ、いいですよ。ただ─」
「ただ?」
「懐かしいな、と思ったもので。」
私は先輩の言葉の続きを待った。
「その異能者は実在します。そして彼は私の知り合い…いえ、友人…だったのかもしれません。ですが、この場所で共に飲む仲ではありました。名を……」
そこまで先輩が話した時、コツコツと誰かが階
段を降りてくる音が聞こえた。新たなお客さん
かな、と思い私は先輩に目を向ける─と、先輩
が階段の方を見て驚きの表情を浮かべ固まって
いた。つられて私もそちらに目を向ける。そこ
には長身の男が1人、いた。淡い茶色のコートを
着ている。
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作者名:双つの黒 | 作成日時:2018年2月18日 13時