kiss my heart . 5 (ページ8)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:15,628 hit

心自由になるページ8

.

『. . . ぁ. . . 。』

指先が覚えてる。

裕太くんの髪。

私は無意識に…その髪を撫でてた。

すっごく頑張ってるんだなーって思ったら、
母性本能…ってヤツなのかな？

なんか、そんな気分になって。

ゆっくり、ゆっくり…髪を撫でる。

『. . . . . . 裕太くん. . . . . . 。』

気がつけば、言葉にならないくらい小さな声で
私は裕太くんの名前を呟いてた。

なんだろう、この感じ。

この…優しい気持ち。

『！』

と、突然。

裕太くんが薄く目を開いた。

「. . . ッ。」

お、起こしちゃったかな…(汗)

「. . . それ、気持ちいい. . . もっとしてよ. . . ？」

『え. . . 』

それだけ言うと、裕太くんはまた目を閉じた。

『裕太くん. . . 。』

私は止まってた手をまたゆっくり動かす。

裕太くんは何も言わずに、本当に一瞬だけ口元で
笑った気がした。

まるで猫みたいに

小さな子供みたいに

裕太くんは撫でられながら気持ちよさそうに
眠ってるみたいだったから…

私もずっと、その愛しい髪をそっと撫で続けたんだ。

どうか明日は裕太くんが笑ってますように。

この指先から私のパワーが届けばいいのに。

頑張ってる裕太くんを癒したい…。

私の中は、ただ、その想いだけだった。

ただ、それだけ…。

「んー。朝か。」

隣を見るとAは仕事に行ったみたいでもういない。

不思議と、あんなにあった疲労感はすっかり
なくなってて…

今はすごく穏やかな気持ちだった。

「. . . . . . 」

気持ちのいい朝で。

胸ん中はひどく満たされていた。

それはきっと、Aのおかげなんだと考えなくても
わかる。

Aとの時間が、空気が、俺を癒してくれる。

あんなにずっと、心底疲れきってたはずなのに
嘘みたいだ。

でも…

同時に芽生えた気持ちがあって。

今はそれが胸をモヤモヤさせてる…。

Aの服から香るガヤの匂い。

「. . . っ。」

Aの隙間を俺で全部埋めてしまいたかった。

確信してしまった想いはもう、暴れ出して止められない。

ねぇAちゃん

ふとした瞬間、君を思う。

それはもう、一日中。

今まで他に何を考えてたのかというほど。

君は今、何を思ってるんだろう？

君はどんな時間を歩いて来たんだろう？

俺のいない場所で。

よかったら、聞かせてくれないかな？

.