story 38 ページ39
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「……A。」
静寂と化した病室で楽はベッドに横たわる彼女に寄り添って、小さく彼女の名前を呼ぶ。彼女からの返事は何も返ってこないが別によかった。
しかし、何故Aが同じメンバーである龍之介を覚えていたのだろうか。自分のことはおろか、天やIDOLiSH7、そしてRe:valeとの記憶がなくなっているのにも関わらず何故…。
一旦、外の空気を吸おうと病室を出ると偶然にも龍之介と鉢合わせたがお互い何も言わなかった。
…いや、言えなかった。
そして龍之介がそのまま病室に入って行くのを確認して、それ以上は余り深く考えないよう歩く速度を速めた。
_________…
『…ｯ…ひぅっ…!!』
「どうしたのAちゃんｯ!?」
突然、身を守るような態勢で彼女は両耳を塞いで嗚咽するような声をあげた。そのことに龍之介は急いでナースコールを押そうとしたが彼女に止められてしまった。
「Aちゃん…」
『…ｯ…は…』
自分の着ている服の袖口を弱々しく引っ張っている彼女を自分の方に引き寄せ、まるで壊れ物を扱うかのようにやさしく抱き締めた。
____________…
「…なんで龍まで寝ているの…。」
天の目線の先には、ベッドで一緒になって寝ているAと龍之介の姿があった。起こそうとするがあまりにも気持ちよさそうに寝ているため仕方なく天は諦めた。
「……やっぱり病院は嫌いだ。」
そう思えてくるのは自分の片割れである陸が昔、よく発作を起こして入退院を繰り返していたからだ。
もしも陸がいなくなってしまったらと思うとゾッと鳥肌が立った。
「……、(早く記憶が戻ってきてほしい。)」
想いを胸に秘めながら、近くに置いてあったタオルケットを二人に掛けた。
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作者名：赤い色のアホ毛 | 作成日時：2017年6月4日 0時
