伍拾陸 ページ14
夜、鎬は寝付けなかった
理由は明後日に控えた出陣だろう
自分を無へと帰したあの炎
紡がれる声、痛む体
全てが懐かしかった、嫌な意味で
「あれ…鎬、まだ起きてたんだ…」
夢うつつのままの鯰尾が布団から出てきて縁側に腰掛けた
目を擦り、欠伸をひとつ
なぜ起きてきたのかは分からない
「鯰尾兄は…焼けた時のこと覚えてる…？」
「……焼けた時、か。あんまり覚えてないかな。ぽっかり抜けちゃっててさ」
へへっと苦笑いを作る鯰尾
鎬はそれが羨ましく感じた
「いいな…覚えてないって…」
「どうして？」
「怖かったんだ。あの時」
鎬が弱音を吐いた
鯰尾は驚きを隠せないまま、彼の話を聞く
「ずっと…現世にいていいのか。そう思っていたら、外から悲鳴が聞こえるんだ。『助けて』とか『熱い』とかね…」
「蔵に火が移ったとき、周りの刀剣も俺も狼狽えた…怖かった」
「動きたいのに、動けない。いていいのかって思ってたのに…まだいたいって思って……」
「焼け始めた時、凄く痛くて……助けて欲しかった。熱い中叫んだ…『助けて、助けて。ここにいるよ、助けて』って…」
鎬の過去は計り知れない
鯰尾はそう思った
鎬から語られていく彼自身の過去、歴史の中で消えた彼の過去
ひとつひとつに恐怖が宿っていた
「焼けて、消えて…俺はただの思念体でしかなくなった……今でも夢に見る…あの時の…炎に巻かれる夢…｣
「…」
鯰尾は鎬の肩を掴んで自分の方へと引き寄せた
大丈夫、分かるよ。だからね、言わなくていいんだよ
言わなくても、思いが同じだから
「…そうだな。怖いことは…言わなくていい｣
「思い出しても辛いから…寝てすっきりしよう…。心配しなくていいよ、俺は鎬のお兄ちゃんだから、鎬が寝るまで隣に居るよ」
さぁ、眠ろう
昔を思い出さないように、深い眠りにつこう
大丈夫、お兄ちゃんがいるよ。兄弟がいるよ
怖くなったら守ってあげる
鎬、知ってる？お兄ちゃんとかお姉ちゃんは弟、妹を守るためにいるんだよ
お前を守らせて
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東雲 - この作品大好きです！ゆっくりでいいので続きを楽しみにしています(*^^*) (2021年4月13日 21時) (
レス) id: 3d369926d3 (このIDを非表示/違反報告)
空桜(プロフ) - お疲れ様です！のんびり待っててよかったです＾＾ (2020年1月31日 0時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
鶴まじ天使(プロフ) - ﾔﾊﾞｲ好きだぁぁぁぁ…！更新頑張ってください！！ (2019年5月13日 22時) (レス) id: 2390bd5229 (このIDを非表示/違反報告)
葡萄月@刀アカ - ぎゃぁぁぁ！！神作品を見つけてしまった！！更新頑張って下さいっ！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: a246b0d986 (このIDを非表示/違反報告)
自由陣(プロフ) - おお！ありがとうございます！覚えてますよー、ティッシュの方！最初のところの研究者の江成ちゃんは研究熱心…(？)の域を彷徨ってます← 更新頑張りますよ〜！ (2019年4月29日 20時) (レス) id: b178f06fe6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：自由陣 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/rekishilov1/
作成日時：2019年4月28日 15時
