103)羽王戦争・許しと悔恨 ページ7
「はい、それは」
【それを止める為に、私は天羽組長にお伝えしました】
「相手を“許す事”です」
【私達兄妹に免じて、許してほしい】
そんな事、言われるまで微塵も浮かばなかった
「今回天羽さんは先に手を出してきた俺達に対しての怒りを飲み込んでくれはった」
己の信念で死に行く筈だった命を救い、幾度なくその手を差し伸べ、多くを掬い上げてきた少女達がいてくれたからこそ、その願いを口に出来た
「ほんまなら、喧嘩を吹っ掛けてきた俺達を粛清するべきや、向こうの人間を何人も殺し、瀕死に追いやってきた。だけど、それでもあの人は全部堪えて天王寺組の人間を帰してくれた。俺は、その心意気に応えて、怒りと矛先を収めるべきやと考えます」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
Aの言葉は、きちんと伝わっていたようだな
華太は腕を組み、目を向ける
そこにはフードと帽子で顔を隠す2人が立っていた
「恨みに目がくらんで、今回の引き金を引いたのは他でもない。俺です」
絞り出すような言葉
そこにあったのは身を削らんほどの悔恨だった
大嶽の脳裏に浮かぶのは自分についてきて死んでいった舎弟達
そして、小さな少女が救ってくれた命達
「俺が戦争せんかったら誰も死なんでよかった、必要な犠牲やとかわけわからん事言うて、相手方にも取り返しのつかん傷をつけてしもうた」
【少しだけ立ち止まって、後ろを見てみませんか?】
「ほんまに関東と揉めたないんやったら武力に頼らん手はなんぼでもあった!けど俺は端から考えんかった!東京とは会話にならんと思い込んどったからや!」
今思えば、関東の極道が全員関西を攻めるなんて考えている訳ではなかった
こちらが協定を望めば、天羽組はその手を取ってくれたかもしれない
喧嘩を吹っ掛けてきたのに、舎弟を救ってくれた少女の家族なら・・・・・
「戦争を起こした大罪人として、俺に出来るケジメを考えてきました」
そう言って、懐に手を入れた大嶽
取り出したものを見て会場は騒然とした
華太も、見ていた2人も、小林も目を見開いた
「三國の親父、アホなカシラでほんまにすんまへん」
それは手榴弾だった
「大嶽、お前・・・!」
その目の奥の覚悟を三國は見て取った
「自分が起こした戦争で若い衆をようさん失いました!そのケジメは取らねばなりません!そして関東と関西の恨みの連鎖を断ち切る一助になりたいと思いますうぅ!!」
大嶽は取り出した手榴弾の安全ピンを手にかける
104)羽王戦争・天王寺組若頭のケジメ→←102)羽王戦争・関西の答え
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かな - メアリー、スーヒロイン? (4月10日 23時) (レス) id: 6ea7610922 (このIDを非表示/違反報告)
りー(プロフ) - 続き楽しみです! (4月1日 7時) (レス) id: 54a38d0a40 (このIDを非表示/違反報告)
青魔道士 - 宝石色の白虎の方も読みたいです! (3月1日 13時) (レス) id: 9d0898b86e (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 続きを楽しみにしてます! (2月8日 17時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 続編おめでとうございます (1月17日 8時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水琴 | 作成日時:2024年1月16日 23時