【ヒューマンバグ大学】狂人達に愛された食事処・参 (ページ36)

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132)天羽組と温泉旅行⑩ ページ36

「ここにいるよ、にぃ様」

小さな呟きが聞こえたらしく、声がした

華太がいた所から死角になる所、広い窓に凭れ掛かるように畳に座るAがいた

「そのまま寝たら良いのに」

「目が覚めちまったんだよ。お前なぁ、この時期にその格好は風邪ひくぞ？」

「寝る前にお風呂に入ったから暑かったの、汗が引いたら浴衣着るよ」

薄手の黒いキャミソールに、ショートパンツ姿の妹にため息が出る

「・・・・・・・・・・・・・・」

ふっと目に入るもの

「(“月”と“蓮華のような銀の花”と“蝶”)」

Aの腰には自分のような大きいものではないが、入れ墨が入っていた

三日月の中に描かれた銀色の花、その周りを飛ぶ蝶

温泉で入れ墨の話を和中と野田、そして茂木とした事を思い出す

「(銀色の花は【銀華】と呼ばれる雛の事)」

蝶は優雅、変容、男を頼らない自立した女性を意味する
美しくあり、愛らしくあり、それでいて残酷な一面も持ち、自分が持つ繋がりだけで何でもやり遂げる彼女らしいもの

そして、月は

「(月は“道標”)」

迷える者に手を差し伸べ、その暗い道を照らす優しい光

彼女がどんな気持ちでその入れ墨を入れたのか、聞いたことはなかった

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「？なぁに？」

見つめてくる兄に首を傾げ、掛けてあった浴衣を纏うA

「いや、何でもない。そろそろ寝るか」

「うん、お休みなさい」

電気を消し、布団に入る

空龍街に戻ればいつもの忙しさが戻って来る

今は短いこのゆっくりと出来る時間を満喫しよう

「A」

「はぁい？」

「これからも、よろしくな？」

「・・・・・ふふっ、勿論。にぃ様も死なない程度に頑張って下さいね？」

「あぁ、わかっているさ」