【ヒューマンバグ大学】狂人達に愛された食事処・参 (ページ35)

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131)天羽組と温泉旅行⑨ ページ35

「食べてますよー、ありがとうございます」

注がれたお酒を飲むA

「よぉし！華太ぉ！お前みんなの前で来年の目標を言えぇ！」

酔いが回り、上機嫌な天羽が突然こんな指示が飛んてきた

「俺ですか？」

突然の指示に、ハハッ、と笑いながら立ち上がる

「・・・俺はこの天羽組に来るまでは、妹のAが全てでした。ただAと共に生きていられればいい、この子を守る事さえ出来れば良い。そう思っていました」

両親によって人身売買され、生き別れになった

だけど、恩人の夏目姉妹によって再会できた

そのせいもあって、妹の事が大事で、周りに指摘されなくても自覚している

「でも、姉さんの指示で天羽組に入り、兄貴達から色んな事を学ばせていただきました。時に愛のある強烈なご指導はございますが、頭が良くて、喧嘩が強くて、実は仲間想いで」

もしかしたら、姉さんは俺の将来の事を考えていたのかもしれない

妹ばかり気にするから、見聞を広げさせるのも目的だったのかもしれない

「どんな敵が相手でも天羽組の看板を背負い、任侠の元に決して折れない心で戦い抜く。広すぎるほど広い背中をずっと追わせて頂いています。そんな姿を見せてくれる兄貴達には感謝しかありません」

天羽の隣に座るAを見れば、穏やかに微笑んでいた

「いつしか、俺もそんな背中になりたいと思いました」

心優しい妹が、その人よりも華奢な体で、色んな奴を助ける為に手を差し伸べ、そいつが抱えるものも共に背負っていた

だから俺も、そんな妹を支える為に、守る為に

「来年は一皮も二皮に剥け、この天羽組を誰よりも広い背中で背負ってみせます！」

ビールジョッキを持ち

「みんな、俺について来ぉおい！！飲めぇぇええ！！」

『おおおおぉぉぉ！！！』

滅多に声を荒上げない華太の叫びに、兄貴分も、舎弟達も盛り上がる

「にぃ様」

近付いてきたAの頭を撫でる

「そういう事だ。俺はもう遠慮しねぇからな？」

「あら、おっかない。何の話かなぁ」

誤魔化そうとする妹に、少し強めにグリグリ頭を撫でる兄

「よく言った！！華太！！目標はでっかくだ！！」

周りの拍手と歓声に笑みを浮かべる華太

そうして、宴は幕を下ろした

それぞれが部屋に戻り、思い思いに過ごす

小峠兄妹も、部屋に戻り、華太は酔いもあり、うとうとしていた

「・・・・・・・・・ん？」

ふっと目が覚め、周りを見ると、一緒に戻ってきた筈のAの姿がなかった

「雛？」