【ヒューマンバグ大学】狂人達に愛された食事処・参 (ページ20)

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116)天羽組と秋の宴ページ20

天羽組門前、野田はある人物の到着を待っていた

すると、一台の車が停まり

「野田の兄様」

後部座席から降りながら手を振る白い妹の姿に、普段は吊り上がっている目尻も優しげに下がる

「急に呼んで悪かったな」

Aから番傘を取り、代わりに差す

「平気だよ。野田の兄様、何が食べたい？」

「そうだなぁ・・・エビチリか食いたいのだ」

「あら想定外。エビ買ってないよ」

「北岡ぁ！！エビを買ってこぉおおい！！」

「えええぇぇ！！？」

車から荷物を下ろしていた北岡に叫ぶ

「冷凍の大きなむきエビでいいよー」

「わ、わかりましたー！！」

再び車を走らせる北岡

「あはは・・・雛ちゃん、台所にこれ置いてくるよ」

「ありがとう！南雲の兄様！」

大荷物を抱える南雲
すぐに舎弟達が駆けつけ、運んでいく

「お前はまずこっちじゃ」

後を追おうとしたAを野田は引き止め、連れて行く

「どこ行くのー？」

「親っさんの所」

組長室へ行く2人

「おぉ、来たか、A」

笑顔の天羽が待っていた

「こんにちは、とぅ様」

にっこり、と微笑むA

「今日は急に頼んですまんな」

「いえいえ」

穏やかに話していると、天羽が真剣な表情を浮かべる

「先の戦争では、またお前さんに助けられたな」

「・・・・・・・・・・」

Aは目を伏せる

「お考えになっていた結末とは、違うと思いますが」

「お前さんがそうする事には意味があるんじゃろう」

見透かすような眼差しにAは苦笑を浮かべ、懐から一通の手紙を取り出し、天羽に差し出した

「“彼”から預かりました。本来は直接貴方の前へ来るのが礼儀ですが、現在“彼”を無闇に連れ歩く訳にはいかないので、お手紙を」

「そうか・・・受け取ろう」

天羽は手紙を受け取り、封筒から中の便箋を取り出す

「お前さん、内容は？」

「見てません」

「そうか。わざわざありがとう、これは読んでおく」

「はい、よろしくお願いします」

Aは一礼し、組長室を出た

天羽と野田はそれを見送る

「親っさん。その手紙は」

「先の戦争の謝罪と、礼・・・それからこれからの事じゃな」

「本気でAにつくって事ですかぃ」

「そうなるな。奴は決して外道ではない。上司としては良い男だ。戸狩達の忠誠心を見ればよくわかる。Aにとって、悪い事にはならないだろう」

「華太曰く、奴をAのもとへ置く事にしたのは2人の姉貴らしいんで、その心配はしてません」