36)黒焔の協力者 ページ4
旅館から車で脱出を試みたナオミと春野
だが、組合の異能者、スタインベックの葡萄の枝に囚われる
「そう怖い顔しないでよ、少し頼みがあるだけさ」
「頼み?悪党にとって、“頼む”は“利用して奪い使い捨てる”の類義ですわ」
ナオミの言葉に苦笑を浮かべるスタインベック
「悪?参ったなぁ、どうも誤解があるみたいだ。組合は悪の組織じゃないよ、勿論僕も」
人の良い笑みを浮かべる
「故郷に君くらいの年の妹がいるんだ。大家族でね、夕食は戦争さ。妹はパイが好物でいつも僕の分まで食べる。でも可愛くてつい許しちゃうんだな」
「だったら、私達を逃がして」
その時、葡萄の枝が再び車を軋ませる
「きゃああぁっ!!」
「勘違いさせたなら済まないね。組合の任務は過酷だが、払いが良いんだ。解任されたら故郷の家族が飢える」
笑みが消える
「分かるかい?妹の為なら君がどうなろうと知った事じゃない」
「もうっ、止めてぇっ!!」
春野が叫ぶ
「(Aお姉様の予測は絶対に外れない、近くにお姉様の協力者が近くにいるはずっ!)」
ナオミは祈るように春野を抱き締める
すっと音もなくスタインベック達の背後に現れる影
「その気持ちは良く分かるぞ」
「は・・・」
その瞬間、首から出ていた葡萄の枝が切り裂かれた
「ぐあぁっ!!?」
地面に叩き付けられるスタインベック
ラヴクラフトは蹴り飛ばされていた
「俺の妹分は人使いが荒い、結構無茶な頼みもある、だが、信頼されると答えたくなる」
少し長い黒い前髪が揺れ、赤い瞳が驚愕するスタインベックを映す
【黒神 煌鴉】
「俺も、身内以外どうでもいいと思っているが、お前のように周りを見捨てると恨まれるのでな」
「君は、探偵社の人間かい・・・!?」
切られた枝から黒い炎が揺らめく
「いや、俺はただの用心棒だ」
煌鴉は持っていた太刀を振るい、車の扉を衝撃で斬る
「貴方は、お姉様の・・・!」
「もうすぐ下の線路に汽車が来る。数秒だけ停まるようAが手配している。行け」
「はい!!春野さん!行きますわよ!!」
春野の手を掴み、走り出すナオミ
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作者名:水琴 | 作成日時:2019年7月15日 1時