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夜の医務室 ページ9

そのあと無事に抜け出してうずまきで昼食にありつけることに成功。

それから図書館に行ったり、本屋で新刊を買ったりして自由に過ごした。

ちなみに今私はまた探偵社にいる。

最後の仕事が残っているからだ。

社員が帰宅時間になってきたら社内の掃除をする。これが仕事だ。

掃除といっても軽く掃いたりするだけなので難しくも大変でもない。

ふと気がつく。医務室に誰かがいることに。

扉を少し開けて覗いてみると、ベットの上に太宰さんが眠っていた。

きっと治療や麻酔もして疲れてここで一夜明かすことにしたのだろう。

恐る恐る近づいても起きる気配はしなかった。

右腕はやはりない。


(これから影響してくるかもしれないな…)

探偵社という荒事を任されている仕事で腕が一本ないのは厳しいだろう。

(起きないのなら…やるか…)


太宰さんの右肩から断面まである包帯をそっとほどく。

一応睡眠薬を飲ませ、目に布をかける。

自分の右腕の包帯をほどき、鞄からナイフを取り出す。

太宰さんが切られたところと同じところに刃を入れる。

「っ…」

これは今までにもやったことがある。でもやっぱり痛いものは痛い。

そのまま一周させて、切り離す。

私は普通の人間より腕や足の痛覚はない。
ナイフを入れて切り落としても普通の誤って少し深く切れてしまったぐらいの痛さである。

血は離れた瞬間に流れるのが止まるので右肩のだけ押さえて止血する。

ここからが問題だ。

腕の向きを確かめ、太宰さんの腕の太さと私の腕の太さの差を見ながら
中心にピトッとくっつける。

しばらくそのまま押さえて血管と骨がある程度接着し始めたら包帯をしっかりと巻く。

あとは元の腕と同じように包帯を巻く。

これであとは太宰さんの自己治癒力に頑張ってもらうしかない。

神経がつながる時は酷い痛みが伴うらしい。

でもきっと眠っていて動くことがないから大丈夫だろう。


張りつめていたものが緩んだように溜息と一緒に力が抜けていく。

ゆっくりしゃがみ、息を整える。冷たい汗が全身から出てくる。

いけない、ここで座り込んだら明日の朝になってしまう。

震える左手で包帯などを鞄にしまい、踏ん張って立ち上がる。

大丈夫、血も落ちていない。

そっと太宰さんの目にかかっている布をとって緩く撫でる。

まだ話したこともないが、きっと良い人なのだろう。


医務室の扉を開けたまま覚束ない足取りで探偵社を出て、

歯を食いしばりながら帰路についた。

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ミコール(プロフ) - すみません、バグか何かで編集ができなくなったので全く同じ小説を作り直します。題名もこのままに致しますのでそちらをこれから読んでくださるようお願いいたします。本当に申し訳ないです… (2018年10月21日 21時) (レス) id: 20d2710782 (このIDを非表示/違反報告)
ミコール(プロフ) - イゼッタさん» !ありがとうございます!少しずつになりますがこれからもよろしくお願いします。 (2018年10月20日 1時) (レス) id: 20d2710782 (このIDを非表示/違反報告)
イゼッタ(プロフ) - がんばって (2018年10月15日 2時) (レス) id: 1f346eff48 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミコール | 作成日時:2018年8月8日 0時

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