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ーー 一年後
「…よっ」
「おっそ」
「まだ30分しか経ってねぇ」
「いや30分遅刻な?」
花束を抱えて訪れたのは彼女が眠る場所
緑に囲まれた静かなこの場所からは
Aが大好きだと言った海が見える
「…どうする?あいつ、違う徹に会いに行ってたら」
「タイムトラベル?笑 何回も出来ないっしょ笑」
「もしもだよ」
「…また、何回でも付き合うんじゃない?」
「きっっも」
「おい!笑」
記録の中で生き続ける未来と
「…あ、った」
綺麗な花が添えられた墓石
刻まれた"美澄A"の文字
偶然知ったこの場所は、あの日最後を迎えた場所によく似て静かで
なんとも彼女らしいなと思った
「…ひさしぶり。やっと会えたね」
薄れていく記憶
微かに覚えている、君の声
「俺…元気にやってるよ」
答えがないとわかっていても、やっぱり伝えたくて。
「大輝はね、なんか欧州で仕事してる」
「…また、来年も再来年も来るね」
そう、笑顔で別れを告げてイヤホンを耳に差し込む
君に貸したノートの最後のページに落書きされた文字
ポエムのような、なにかを伝えたいっぽい文章は
今年、歌となって俺の元へと届いた
君がどの時代を生きて、いつ死んだかなんてわからないし知ろうとは思わないけれど
もしかしたら俺に忘れないでって言ってるような気がして
今日も俺はその曲を聴いて口ずさむ
ーー記憶が色あせないように。
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作者名:aaako | 作成日時:2020年3月8日 15時