確率たった2%の恋の話

26 ページ26

.
side yuki




こっちを睨み続けるAが口にした言葉に

俺はひたすら目を見開き続けた





「ーーいつ、それ」

「あの電話の後…２時とか…」

「はぁ？ちょっと見して」



記憶に無い話にハテナマークが飛び続けた

そんな俺をAは少し困惑が混ざった顔で睨み続けた





「…俺じゃない」




確かに送られていた文章

トークルームは確実に俺の名前だし、前後の記憶はある

でも…



「違和感無いの？コレみて」

「…なに、違和感って」

「俺が今までこんな事言ったか？」

「…ないけど」

「だろ？」

「でもそれは別に今回言われただけなのかなって…！！」

「まぁ…そう…確かにそう思ってもおかしくねぇけどさ…

でも、さ。ここ。



ーー俺、Aをお前なんて呼ばない」

「えっ…」

「洸史とか太一とか、真佑とかには言うよ
でも俺、Aを一回も"お前"なんて呼んだ事ないはずだけど？」




3歳に出会い、既に19年が経った

共に育ってきたAを俺は意識して名前で呼び続けた

例え周りがAをお前と呼んでいても、俺はちゃんとAを名前で呼んできた



ーー名前を呼んで振り向く彼女の姿が好きだ、とかそういう理由で。




「信じんなよ馬鹿」

「だって…祐希から連絡きたんだもんっ…」

「あー……じゃあ俺なんもしてねぇのに無視されたんかよ」

「…誰が送ってきたの？」

「彼女じゃない？」

「彼女って…」

「迷惑かけた。彼女はなんとかしなきゃだな…ま、そういうことだからもう普通にして。無視すんなよ


…ほら、帰んぞ」



久しぶりに隣に立って歩いた夜道

なにも話さなくても居心地が悪いことがない



「…全日本。頑張れ」

「うんっ…！！」




暗闇に包まれていても、笑顔のAが見えた気がした




.

27→←25

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す