異国の地で運命に巡り合えた話

#14 ページ14

.



祐希くんの唇は、そっと離れていった。




「…イタリアから帰って忘れた日はなかった

絶対にまたイタリアに行きたい…そう思えたのは確実にAちゃんが居てくれた日々があったから


去年もラティーナに来た。でも会えなかった
連絡先は変えてるし、でももしかしたら…って毎日思ってた。また、会えるかもしれないって

モデナに試合で行ったけど店は定休日だしショックだった


…会いたいって。この2年間ずっと思い続けてた」




キスされて、今度は抱きしめられて

鍛え抜かれた大きな身体はまるで私を全て包み込むようで

…私の拒絶する気持ちさえも包み込んだ





「…やっと会えた…夢みたい」





夢みたい…？

…夢は、夢のままが一番いいのに




あぁ、そうだ。流されちゃダメだ

私は…



「…私はやめた方がいいよ」

「…は？なにそれ」

「祐希くん…きっと不幸になるよ」





…ダメだよ。私は、彼の隣には居られない




あの時と同じ、私の拒絶の言葉を聞いて祐希くんの温もりが離れる

そして超至近距離で目を合わせてくる彼



「…なんで？理由は？」

「なんでも。だから付き合えないの」

「理由を話せよ」

「やだっ」

「やだじゃない」

「いやだっ」

「目を見てっ！！…理由をっ…話して？」




ずるいんだ、彼は

そんな真っ直ぐな目で見られたら




「…っ、怖いのっ！！」




嘘なんかつける自信なんて無くなるに決まってる

…私だって、ずっと会いたかったから




「怖い？」

「形のない愛とか恋とかっ…


好きとか嫌いとかっ！！
形のない…真実だと保証のない気持ちが怖いのっ！！」





.

#15→←#13

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す