身長差0の甘酸っぱい夫婦の話

苦しい ページ20

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イタリアに戻って数日後の朝

ネット配信されている会見を、チームメイトと携帯で見る




ーーそう、あの引退会見を。





『ギブスが痛々しいな…』

『まだ手術して間もないだろう？まだ痛むのに…』



悲痛な声を上げるチームメイトをよそに、俺は言葉一つ逃さないように耳を傾ける






"ーー世界選手権で優勝し、すぐさま引退
オリンピックまで時間がない中で、一年足らずでキャプテンを降りるという行為が無責任だという声もありますがいかがですか？またーー"



石川「…無責任？」

『ユウキ？翻訳が間違っているよ。無責任だと出たけど』

石川『記者はそう言ったよ。すぐに降りるなんて無責任だ、と』

『…あぁもう見てられない！怪我をしたのにこんなすぐに晒し者にされて…それで無責任なんて…ハセ…辛いだろう』

『ユウキ？人はいろんな考えがある。そりゃあキャプテンの立場が安定していた方が間違いない。それは俺も同意見だ
…ただ、俺はこの記者は嫌いだ。人じゃない』

『何も知らないんだ、きっと。ハセがあの日本のチームでどれだけ重要な存在だったかを。
彼女は素晴らしいバレー選手だったのに』

『あんなに世界を渡り歩ける選手なんて一握りだ。その貴重な事実を知らないんだよこの記者は。じゃなきゃこんなこと言えないさ』

石川『…俺は何も出来ないのか』

『ユウキ…』

『…見ろユウキ！シッラがネットに投稿してるぞ』





"彼女は頑張ったじゃない。日本のピンチを幾度となく救ったのは彼女だわ
なのに何故責められるの？無責任なんて一番似合わない言葉よ！！日本のために頑張ったじゃない！！
誰よりも苦しんだ彼女にそう言う方が無責任だわ！！"



『…色んな人が見ているんだ、この中継を』

『みんな間違ってるって言ってる』

『俺たちも出すぞ！！祐希はそこで聞いてろ！！』




身内の俺よりも周りが怒っているからか、何故か冷静な心でいられた


彼らの動画に俺が見切れていることなんて知らずに、ただ静かに耳を傾けていた






ーー後日、動画サイトにはバレーボール選手らのコメントが一本の動画となり公開されていた

コメント欄にはサポーターらからもお疲れ様でした、というメッセージが溢れた

バックミュージックには、ゆずさんの栄光の架橋

みんな、彼女のバレーボール人生に拍手していた






ーー想いよ届け、日本で頑張る彼女の元へと






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