身長差0の甘酸っぱい夫婦の話

恩返し ページ12

.





「ーーお待たせしました」



トルコリーグが終わり、三冠を達成した次の日

関係各所への挨拶まわりの最中、急遽日本から私を訪ねて来た人がいた




竹下「ごめんね、終わったばかりでまだ忙しいのに」

「いえ！…あ、監督就任おめでとうございます」

竹下「ありがとう」




2021年から全日本の監督に就任した元バレーボール選手 竹下佳江さん

私も何度もお世話になった




竹下「どうだった？楽しかった？」

「充実した2年間でした。」

竹下「…そう。


あのね初瀬…私貴方にお願いがあってトルコに来たの」

「お願い、ですか？」

竹下「うん。…もう一度、全日本に力を貸してくれない？
今の日本には私たちの時の沙織やメグのような絶対的エースがいないの
世界を知る、絶対的エースがいないのよ


もう一度、日の丸を付けてプレイして欲しいの
私に貴方の力を貸して欲しい」





…日の丸を、もう一度？




「…何故、このタイミングで？」

竹下「本当は貴方みたいな凄いアウトサイドヒッターは最初から呼びたかった

…でもっ、貴方の夢を私は知ってたから呼べなかった
夢を諦めて日の丸を背負わせる事なんて出来なかった…！！

夢に集中してる貴方の邪魔は出来なかったのっ…」




今の全日本の成績をたまたま昨日知った

メダルにはあと一歩及ばず、苦しい日々だと





「…竹下さんズルイなぁ笑

そんなふうに言われたらっ…私断れないの知ってるくせにっ」

竹下「…引き受けてくれるの？」

「はい。竹下さんにはお世話になった身ですから」

竹下「ありがとう…！！是非キャプテンとして引っ張っていってほしい」

「…キャプテン？」

竹下「そう、キャプテンとして」

「…キャプテンしたら、オリンピックまでいなきゃですよね？」

竹下「えっ？まぁ、いて欲しいけど…」

「…竹下さん、私一つ話さなければならないことがあります
それを聞いて、それでもと竹下さんが言うなら引き受けます」




今の私の肩の状態、そしてこれからを話せば涙が溢れた私と竹下さん



竹下「ーーばかっ！！」

「バレーボールしかないんです、私には」

竹下「…一緒に、戦いたい。私も」

「…お世話になります」





固く握った掌



私のバレーボール人生の最後が始まった




.



監督わからないので書きやすそうな竹下さんにしちゃいました

結婚報告→←唯一の親友へ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す