Live you (ページ3)

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「人を殺さないと生きていけない、でもきっとヒナちゃんはそんなことできへん」

2人の間にはしっかりと優しくしてくれたヒナちゃんが思い浮かんでいた
人を殺して生きるくらいなら餓死することを選ぶ人だ、と男は確信していた

「もうひとつ提案」

すっかり涙が引いた目で男は隆平を見つめる。

「ヴァンパイアがヴァンパイアの血を吸うと、吸った方は二度と食事をしなくても生きることができる、吸われた方は死ぬ」

「ヒナちゃんを生かすことができる？」

「うん」

男は大事なことに気がついた。

「でもそれやったら死ぬ人が2人いるやん、俺はいいけど」

「僕も、もう死にたいねん」

隆平の悲しそうな声に男は胸を締め付けられた
どれだけ隆平もつらかったかはシンクに並んだ自分が使っていたフライパンと皿を見ればわかった

「だから、たっちょんはヒナちゃんと話したいやろ？僕の代わりにヒナちゃんを生き返らせて、で、ヒナちゃんにたっちょんの気持ちを伝えて、たっちょんはヒナちゃんに殺して貰えばいい」

とてつもなく魅力的な提案に男の心は久しぶりに踊っていた

「でも、りゅうちゃんは…」

「僕は2人が幸せになってくれれば幸せやねん」

たっちょんがヒナちゃんがいなくなった後も死にきれなかったのは、ヒナちゃんに気持ちを伝えたいという未練が残っていたんだろう、と隆平は考えていた
この方法ならたっちょんを未練なくこの世から救うことができる

「やる？」

男もヒナのことが1番好きだったとはいえ隆平とは何十年も共にした親友だった
親友を死なせて生き返らせることには抵抗がある

「やらせて」

でもきっとこの2年間自分と同じように苦しんできた親友を救うことにもなる
隆平にとってたとえ自分の命を差し出しても、ヒナを生き返らせて自分のことを未練なく死なせることができることは幸せなんだろうという自信があった

「ありがとう」

男は久しぶりに隆平が屈託なくシワを作って笑ったところを見たかもしれないと考えながら包丁を取り出してくる隆平を眺めていた

「簡単やねん、血を飲ませればいいだけ」

隆平は壊れないようにそっと動かないヒナの口を開けた
腕の真ん中あたりから手首にかけて深く15cmほどの切り込みを入れると赤黒い血がじんわりと出てきた
血は腕を伝い指先に落ちていく
血を絞るように自分の腕を握るとヒナの口の中にぽたぽたと血が落ちていった。その瞬間を男と隆平は固唾を飲んで見守った