. ページ2
隆平は充実した冷蔵庫の中身とたった今使い終わったところであろうシンクに並ぶフライパンとケチャップの少しついた皿から目をそらす。
「たっちょん、あかんよ、こんなたっちょんまで死んだような生活送ってどうすんの？」
男は隆平の言った言葉が理解できないというようにヘラヘラと笑う
隆平は毎日この真実を男に届けるのが自分へ科せられた罰だと思った。
「ヒナちゃんは死んでるよ」
その言葉を合図に男は突然顔を歪め涙をこぼす
男の胸は今にも張り裂けそうになにかで内側からも外側からも突き刺されたような痛みと喪失感でいっぱいになった
男がうめき声を上げながら涙をこぼす様子を隆平はなにも感じないように心を殺しながら黙って見ていた
伝えない方が幸せなのかもしれない
でもそうすれば隆平が最も大切にする2人のどちらもを失くしてしまうことになると思った
結局は自分のため
だから早くたっちょんを救ってあげないと…
「たっちょん、今日は大事な話があるからちゃんと聞いて」
目の周りを赤く充血させた男は無言で隆平の方を振り向いた
隆平は1ヶ月前に知ったこの方法を話すかどうか迷っていた
間違いなく男がこの話を聞けば飛びつくと分かっていたからだ
でも、もうこんなこと終わらせよう
「ヒナちゃんを生き返らせる方法がある」
男は隆平を突き飛ばす勢いで掴みかかった
「教えて、なんでもする、ヒナちゃんが生き返るんならなんでもするから」
隆平は目の前にいる男の痩けた頬と自分の服を掴んでいる骨ばった腕を見て、思わず2年前の幸せそうにお揃いのエプロンをつけながら笑っている2人の姿を思い出してしまい涙が頬を伝った
「ヴァンパイアに殺された人間は25°Cの温度さえ保てば無くなることはない」
今となっては亡くなって3日後にこの情報を伝えたことを隆平は後悔していた
ヒナちゃんの存在がこの世から消えてしまった方がたっちょんも楽だったのかもしれない、と締め切られた年中冷房の効いたこの部屋で思った
「そして他の誰かの魂と引き換えに生き返らせることもできる」
正確にはヴァンパイアに殺された死者の身体には魂を入れることができる
本当は説明しないといけないもっと大事な部分があったがそれは言えなかった
言わないことがたっちょんを救える1番の方法だと思った
「でも生き返った人は完全なヴァンパイアになる、これがどういうことかわかるやろ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
misuzu(プロフ) - オリフラ外してください。 (2017年6月27日 17時) (
レス) id: 06d2977927 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：コーヒー豆雛子
| 作成日時：2017年6月24日 14時
