心を逮捕されました。【降谷零】 (ページ9)

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ガチャ…

彼の姿が見えてホッとした。
こんな身元不明の人物もしどこかに行かれてたらたまったもんじゃない。

自ら"公安警察"なんて名乗って、名前が出てこないなんて怪しすぎる。

「おかえりなさい。」
私を見てにっこり言う降谷零。

「どこにも行ってなかったんですね。」

「もちろん。えーっとAさん、とお呼びしたらいいですか？」

「はい。じゃあ私は…降谷さんで。」

でもなんで名前なんだろう。

「周りに工藤って人がいるんですか？」

「えぇ、まあ」

やっぱり。

「降谷さんがおっしゃっていた、諸伏と松田というものはいませんでした。もちろん、降谷さん…あなたもね」

「…そうですか。」

「本当に何者？」

「僕だって貴女が本当に刑事さんなのか、いまだに信じられませんけどね」

「っ…。」

「でも先程の察知能力と身のこなし…、刑事さながらの動きですね。見事です」

…舐められたものね。

「とにかく、署まで来てください」

「いやですよ」

「あのね、身元不明の男を家に置いとくほど私心広くないんです」

「言ったじゃないですか。降谷零、公安警察のって」

「でもさっき調べてきたら出てこなくて…っ」

「じゃ、僕はどうにかしますのでこの一件はなかったことにしてください」

手を上げて玄関へ向かう降谷という男。

「っ、待って…！」

バタン…。

私の声も虚しく、降谷という男は出て行ってしまった。