心を逮捕されました。【降谷零】 (ページ43)

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犯人は自決せずに取り押さえられ、警部から感謝された。

中村さんも良い判断だったと思う。
さすがAさんの部下だ。

僕はすぐにAさんに駆け寄り、縛られた手を解いた。

「へへ、ありがとうございます」

「へへじゃないですよ。へへじゃ」

手首をぐるぐるさせながらAさんはこう言った。
「だって、降谷さんは絶対私を助けてくれると思ったから」

「…全く……。なんて女性(ヒト)だ」

駆け寄ってきた中村さんもAさんを見て胸を撫で下ろしていた。

「それはそうと、あの時犯人になんて言ったんです？」

「？…あぁ、あの時になら…、

あんたには大切な人いんの？いるならマジその人可哀想だな。こんなだっせーやつに想われてさ

って言ってやったんです。そしたらめっちゃ怒ってました」

「そりゃ怒りますよ」
思わず苦笑した。

「怒るってことは、あいつにも大切な人が居たんだなって思って…。
…大切な人のためにお金が必要だったんでしょうか」

「…かもしれませんね」

「悲しいですね…」
斜め下を向き、切なく呟いた。

Aside

「とにかくAさんが怪我せず無事で何よりですよ」
ふわ、と笑う降谷さん。

でももし、あの銃弾が降谷さんに当たっていたら…
そう思うと怖くて。
「でも、降谷さん無茶しすぎですよ」
人差し指で指さして怒った。

すると降谷さんは私の、指さしてる手を取り、少し引き寄せて言った。
「無茶してるのはAさんです」

今よりも少し近い距離で、ドキ、っとする。

こんなに私のことを心配してくれるのがお父さん、お母さん以外でいたなんて。

「僕が居る時は無茶しないでください」

そういう降谷さんの、目は切なかった。