君じゃなきゃ ページ30
家に帰ってからも、怖かったようで食欲もないAさん。
『ごめんね…こんなんで…』
「それが普通さ」
『零さんが居なかったら今頃私…っ』
ポロポロと泣くAさん。
僕はその涙を手で拭った。
「僕が君を守るよ」
零さんはまっすぐ私の顔を見てはっきりそう言った。
『…っぐす、そんなこと言われたら…。私…っ』
「うん」
『っ、帰ってほしくないって思ってしまう。そばにいてって思ってしまう…。』
「…うん」
『私の中で零さんの存在がもう、大きくなりすぎてて…。』
「僕もさ」
『…嘘だ』
「嘘じゃない」
Aさんは視線を落とす。
『零さんは…優しくて、強くて、ご飯作りも上手で、気が利くし頭いいし、かっこいいし…私なんかそばにいたら、足手纏いにしかならな…っ』
Aさんが言い終わる前に強く抱きしめた。
「僕はもう、君に惚れてしまったようだ」
『…う、そ』
目を見開いて抱きしめた手を少し緩めて見つめ合う。
「君は、人が困ってると手を差し伸べてくれて、頑張り屋で。どんな時でも笑顔を絶やさない。…ちょっと頑固だけどね、そして可愛い」
『が、頑固は余計でしょ、』
もー、って頬を膨らますAさん。
「ははは、ごめんごめん。でもそんなところを好きになった。僕のそばにいてくれないか?」
『…私なんかでいいの?』
目に涙を溜めて言う彼女。
「君じゃなきゃダメなんだ」
『っ、零さん…』
そう言ってまた僕の胸で泣いた。
「泣き虫だな、君は」
『零さんの前だけでは、ね』
目の前で涙を拭う彼女を、僕は一生守っていこうと誓った。
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作者名:つくね | 作成日時:2023年6月4日 20時