宿4 ページ13
「うちって、Aさんのご自宅ですか?」
『はい!実は一部屋空いてるんです。これも何かの縁ですし…安室さんが嫌じゃなければ…』
「僕は凄く助かりますが、Aさんは居心地悪くなりませんか?」
『困ってる人を放ってはおけないんです』
…それもそうだ、自分も同じ状況ならうちにどうぞと言うかもしれない。
身寄りもなく、ましてや住む世界が違うのだから。
「じゃあ、お言葉に甘えても?」
『もちろんです!』
ぱあっと顔が明るくなるAさん。
優しい方なんだな。
こうして、僕はAさんの家に元の世界に戻れるまでお世話になることにした。
カフェを出て、Aさんの家に着いた。
カフェから徒歩5分ほどだった。
『どうぞ、ちょっと散らかってますが…』
確かに洗濯物が洗濯かごにこんもりあるし、食器も朝の物がまだ洗われてないのか、それくらいで後は掃除は徹底してあった。
物が少なくすっきりしている。
「いえ、綺麗ですよ」
『いやいや…!こちらにどうぞ、ここが空き部屋なんですが…』
と、通してくれたのはAさんの寝室の横の部屋。
『こんな部屋で申し訳ないのですが…』
その部屋には、テーブルと椅子が2脚向かい合って置いてあり、その横にネイル道具が置いてあった。
「ご自身でネイルされるんですか?」
『あっ、私はカフェで飲食業なのでできないんですが、元々ネイリストをしていて、今でも友達を家に呼んでプチ自宅サロンしてるんです』
「そうでしたか。そんな部屋をお借りしても良いんですか?」
『はい、たまにしかしてませんし…もし頼まれても今は断りますよ』
そう言って僕のことを優先してくれた。
「すみません、ありがとうございます…」
『いえいえ、あっ、じゃあお客様用のお布団出しておきますね!朝のうちにシーツは洗いますがこれからまた私カフェに戻らなくちゃいけなくて。…よかったらこれだけ干しておいていただけませんか?』
「もちろんです」
そう言ってAさんはカフェへ戻った。
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作者名:つくね | 作成日時:2023年6月4日 20時