精神異常者 [第5人格]

あなたの日記 ページ41

紙の上でスルスルとペンは走っていた。
やがて、走り終えたのかペン立てにスっと戻った。
本は以前、机の上で開いたままだった。
マ「何が書いてあるのかしら…。」
興味本位、本当にそれくらいの気持ちでその本をAちゃん以外の部屋のみんなが本を覗き込む。

[〇月✕日、きょう、わたしは大きなおやしきにおよびだしされた。]
その文を読んで分かった。
これはAちゃんの日記だ。
ただ、それを理解すると同時に疑問が浮かぶ。
本来、荘園のサバイバーたちは他のサバイバーの日記を読むことを禁止されているため、自分以外のサバイバーの日記は読もうとすればたちまち白紙になり、読めないのだ。
…まさか。
ラ「ナイチンゲールさんが…他のサバイバーにAの日記を読むことを許可したのかな…？」
そんなことを呟きながら日記を読み進める。
[大きなおやしき。わたしなんかがこんなところによばれていいのかとおもった。わたしみたいな────ひとごろしが。]
日記には確かにそう書かれていた。
その言葉を読んだらしいナワーブ君がゴクッ、と息を呑む音を響かせた。
ウィリアム君がそんなナワーブを見て背中をさする。
ウ「大丈夫だ。大丈夫だナワーブ…アイツが人殺しなんてするわけないだろう？」
ウィリアムさんが横目で寝ているAちゃんの方を見ながらそう言う。
ラ「き、きっと…何かの間違いだよ！あんな優しそうな子が人を殺すわけがないよ…。」
僕も必死にフォローを入れる。
マ「確かに彼女は人を殺すような子ではないわ！……けれど、今まで1度もサバイバーの日記に嘘が書かれたことがないのも…事実よ。」
信じたくない、その気持ちを全面に出してマーサさんがそう言う。
混乱が走る中、ピアソンさんが静かに言い出した。
ピ「なぁ…もしかすると人殺しをしたのはあのAじゃなくて…赤い眼の方のAじゃねぇか？」
ピアソンさんが言った言葉を聞いて僕は首を傾げる。
赤い眼…？
確か彼女は空のような明るい青い瞳をしていたが。
ウィリアム君があっ！と声をあげた。
ウ「そういやアイツ今日の最後の試合の時、俺を椅子から下ろす時赤い瞳になってたぜ！そんで、口調も悪かった。まるで…Aじゃないみたいな。」
ウィリアム君がそう言って、僕の頭の中に一つの仮説が生まれる。
赤と青、それは性格は真反対のAちゃんの瞳の色(らしい)。そして、先程の自己紹介でのAちゃんが言っていた’精神異常者’。
つまり…

でも、これはただの…僕の勘。

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