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尊敬なんてしないで ページ45

幸「ポンコツ役者は?」

天馬「……まだ残ってる」

幸「何枚?」

天馬「何枚だっていいだろ」


不貞腐れたようにそうやって言う天馬に少し疑問に思う。


『気になる』

天馬「……十枚」


天馬がボソリと言った言葉はとても衝撃的で思わず声を上げてしまいそうになった。


椋「え!?」

幸「一枚もはけてないの?」

天馬「しょうがないだろ!名前を隠してるから、なかなか呼べる人間がいないんだよ!」

幸「自業自得なんだから、しっかりさばきなよ。
っていうか、やっぱり芸能界にトモダチいないの?」

天馬「やっぱりってなんだ!」

幸「まあ、そうだよね」

天馬「まだ何も答えてないのに、勝手に納得すんな!」


収まらない言い合いを私は言葉で覆った。


『と、とにかく!早めにはけた人は残ってる人を手伝ってあげてね。なんとか千秋楽が売り切れるようにがんばろう』

一成「はいは〜い。がんばっちゃうよん!」

椋「がんばりましょう!」

三角「そうだ〜。
さんかくくじ、チケットのおまけにつけたら売れるかも〜」

椋「あ、それ、いいかも!」


珍しく三角が案を出して、皆を納得させた。


天馬「景品は何にするんだ?」

三角「さんかくくじ自体が景品だよ〜。さんかく、もらえてうれしい!」

『……だよね』

幸「それで釣れるの三角星人だけだから」



夏組といづみちゃんは稽古場に行くみたいだ。

私は先に頼まれた買い物をする。


『えーっと、夏野菜のカレー……』


渡されたメモにはそう書かれていた。

つまり、夏野菜が欲しいから買ってきてということだろう。


『まぁ、最近はカレーを抑えてたからいいかな』


独り言を呟いて、ビロードウェイを歩く。


?「A、さん…?」


後ろから聞き慣れていた声が聞こえて、振り向く。


『っ……飛鳥、さん』

晴翔「もう名前で呼んでくれないんですね」

『…関係無いです。じゃあ、失礼します』


踵を返して、歩き出す。
そしたら、腕をグイッと引っ張られた。


晴翔「待ってください。なんでお芝居、やめたんですか」

『関係ない。ボクに関わらないで』

晴翔「俺は、Aさんを尊敬しています。
今も、昔も……!」

『尊敬なんてしないで』


迷惑だから。そう出かけた言葉を慌てて呑み込んだ。

これ以上、一緒に居てはいけない。
私の危機能力がそう言っていた。


『じゃあ、失礼します』


彼は追いかけて来なかった。ま、当然かな?

酷いこと言っちゃったから。

否定しないようにしてた→←強い子の定義とは



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作者名:ろい | 作成日時:2018年6月30日 23時

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