大量の本【皆木綴】 ページ4
Noside
時は夏組が結成してすぐに遡る。
綴｢全員が主役、か……｣
MANKAIカンパニー脚本家兼役者の皆木綴は悩んでいた。
自己主張の激しい夏組はなんと全員、主役をやりたいと言い出したからだ。
綴｢あーだめだ。思いつかない……｣
ほぼ諦めかけている綴に転機がやってきた。
『綴、お邪魔していいかな？』
綴と真澄の自室のドアの外から聞こえてくる声はまだ少し幼い女の子の声。
この寮に女の子…いや、女性は二人だけだ。
一人目はMANKAIカンパニーの監督である立花いづみ。
二人目はMANKAIカンパニーの助監督兼演技指導の花園A。
ドアの外から聞こえてくる声はAの声だ。
綴｢どうぞー｣
綴がドアに向けてそう言うと、ドアが開いた。
綴｢って、なんでそんなに本を持ってるんだよ！？｣
『んー、まぁ色々あってね』
フラフラと歩きながら大量の本を運ぶAを見ながらため息を吐いた綴。
綴｢手伝うっすよ｣
『あ、ありがとう』
さり気なく半分以上持っている綴。まぁ、顔を見るからにかなり重そうだ。
『っ……はぁ、ありがと、綴』
綴｢大丈夫っすよ。それよりこの本は一体…？｣
『次の夏組の脚本を書くのに困ってるかなーと思って、図書室からピックアップして借りてきた』
ピックアップと言われ、かなりある本に目を向ける。
綴｢これ、ピックアップって言うのか…？｣
『これでも激選したから』
綴｢読むの大変そうだな……｣
『でも、内容とかはほぼ覚えてるよ。読んでないのは二冊だけだしね』
綴｢お、覚えてるんすか！？｣
『こういうの得意なんだよ。読んだ本の感想とか、簡単なあらすじ、キャラの特徴はまとめてあるから』
そう言われ、大きめのメモ帳を渡される。メモ帳を開き、丁寧に読んでいく綴。
綴｢(字が綺麗で見やすい…)｣
メモ帳を読んでいる綴とは違い、綴の隣に座り読書体制をとるA。
『綴、どれがいいと思った？』
綴｢個人的にはコレとコレとコレっすね｣
綴が大量の本の山から手に取ったのは三冊の本。
『千夜一夜物語と人魚姫に、ヘンゼルとグレーテル？』
綴｢千夜一夜物語は全員が主役にピッタリだと思うし、当て書きがしやすそうだからっす｣
綴｢人魚姫は天馬の王子様でカバーして、コメディ風にするのもありかなって｣
綴｢ヘンゼルとグレーテルは幸と天馬の当て書きでわざと仲を悪くして、普通とは違ったヘンゼルとグレーテルにしてみたいからっすね｣
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作者名：ろい
| 作成日時：2018年6月30日 23時
