みじかいゆめ。【地縛少年花子くん】 (ページ10)

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血塗れた手をページ10

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血塗れた手を離せないでいた。

書生服を着た彼に声をかけるとにこり、と可愛らしく笑って私に向かって手を広げる。

「……また、したの？」

「人聞きワルイよー、オレは遊んでたダケ！」

そう言えば聞こえだけはいい。
素手で潰したせいか、右の手のひらは真っ赤。

「キニナル？」

「別、に……そういう訳じゃないよ」

ぎゅうっと抱きついてきた彼からは温度が感じられない。背中に手を添えず、なされるがままのように抱きしめられるだけ。

顔を右に向けると赤い手形や血の塊。
本来なら文字を書くはずの黒板も書ける状態じゃない。

「芸術だね」

「ゲイジュツ？」

「うん、褒められたものでは無いけど」

手を伸ばして黒板についたまだ新しい乾いていない血を人差し指につけてそーっと伸ばす。

そこに、ひとつの線が追加された。

「カタカナはこっち」

「私、頬に血をつける趣味はないんだけど」

右頬に血をつけられる。
ぬるり、としたその気持ち悪い感覚に顔を歪めながらも拭おうとしたその手を掴まれた。

「オレと、おそろいっ！」

「……そうだね」

血でおそろいをする必要はないはずなのに。
言うまでもなく、彼はそんなこと理解をしないのだろう。

そんな言葉を呑み込んで、彼を見据えるとゆっくりと艶めかしく笑った。
不意に近くなるその距離に恐怖感を抱いた。

「くふふっ、……びっくりしたァ？」

「うん、びっくりした」

ぺろりと舌で頬についていた血を舐めた彼。
相変わらず何も読めない、つまらないとは思ったことは無いけど困ったことはいっぱいある。

「楽しかったし、もう帰ろ？……ネ？」

血塗れた手を差し出す。
一瞬だけ戸惑うも、次には手を伸ばしていた。

私はまだ、この手を離せずにいる。