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「あ、A。来たんだ」
今日はヤシロと少年を早めに帰らせてAを待つ。少しすると案の定、Aが来た。
その姿はいつもより酷いもので。
頬に貼られたガーゼは取れてて赤くて痛々しい傷が見えてるし、腕も足も切りつけられたみたいな傷跡でいっぱい。
まだ、どれも治りそうにない、新しいキズ。
「…A、保健室は、」
「いい、どうせ意味なくなっちゃうから」
世界は理不尽だ。
どうしてこんないい子がつらい思いをしなくちゃいけないんだろう。
「A、」
「…うん」
「まだ、死なないで」
「……」
返事はしなかった。
でも、多分きっとAはまた女子トイレに来るんだろう。新しい傷を増やして。
「ほら、あっち向いて。俺がガーゼ貼ったげる」
「……ありがと」
弱々しいAを見る度に昔の、生きていた時の俺と姿が重なる。
「ねぇ、A。
夏が終わったら何がしたい？」
真正面で壁に背を預けて出来るだけ笑顔でそう言った。
秋、その次は冬。そしてまた季節が巡って春になって夏がきて。
この放課後の時間だけ、少しでも笑顔でいて欲しいから。
「……夏が、終わったら」
「うん」
「星、…見に行きたい。普くんと。次もその次も、ずっと。私がいなくなっちゃうまで」
心の傷までは消えない。
どれだけ身体の生傷が無くなったって心の傷までは癒えないのだ。
そんなこと、俺が1番分かってたはずなのに。
「…じゃあ、俺と見よ。
Aがガッコーを卒業するまで」
会えるその時まではそばに居るから。
ふんわり、とほんの少しだけ嬉しそうに笑ったAを見てすぅっと寄り添う。
「まだ、
「……うん」
存在を確かめるようにぎゅうっと抱きしめる。
痛くならない程度の力で、ちゃんとここにいるって証明を。
「でも、もし。
Aが辛くなっちゃったら、契約を守るよ。こっち側に来たら俺が命にかえても守ってあげる」
君に、生きるのを強要したいわけじゃない。確かに俺は君に生きてて欲しいけど。望むように在って欲しい、何者にも何にも縛られない君で。
……いつかはヤシロを紹介して少年を紹介して、少しでもAの笑顔が増えればそれで、いい。
"まだ諦めないで、いずれ死するその時までは"
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空色 - とっても好きです。こういうお話大好きです。これからも頑張って下さい！応援しています！ (2020年4月24日 20時) (
レス) id: cb69af0fdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろい
| 作成日時：2020年3月7日 15時
