みじかいゆめ。【地縛少年花子くん】 (ページ4)

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それから2週間。
彼女は学校に来なかった。先生に理由を聞いても口篭るだけで終わる。

3週間目の金曜日、夕焼け放送が聞こえて帰ろうと荷物を持つと不意に、足音がした。
後ろを振り向くと変わらない笑顔でそこに立っている君がいた。

「やっほー、柚木くん。泣いてたの？」

目から零れ落ちてる涙を急いで拭って、彼女の名前を途切れ途切れに呟く。

「んー？」

面白おかしい、とでも言いたげに彼女はくすくすと人の気も知らずに笑って壁にもたれかかった。

吊っていた右腕は外れてて、首から無造作にぶら下げられたその三角巾だけが汚れてる。
制服もそうだ、山で遭難した勢いの汚れ方だった。

「それ、」

「ん？…あ、コレ？
大丈夫だよ、あんまり気にしないで」

綺麗な足も傷だらけで夏もまだ終わらないのに着ている長袖の破れた隙間から覗く腕も傷だらけだった。

「大丈夫なわけ…、どうして、」

「……ふふ～」

ただ愉快そうに笑うだけだった。
傷だらけの彼女を見てまた視線を逸らす。

「……怪我、もうしないでよ」

「う、うぅん、そんな事言われても」

俺だって強くは言えない、そんなの分かってる。

「また明日、って俺言ったのに」

「……私はまた明日じゃなくて、またねって言ったんだよ」

ずるい大人みたいなことを言う彼女を見て意図的に頬を膨らませる。

「あっはは、ごめんね。帰ろっか、柚木くん」

何も持っていないことを主張するように手をブラブラさせて廊下を歩く彼女の後ろ姿を見てあることに気づく。

「……かみ」

「邪魔だったからネー」

無造作に切られたその髪はどう考えても自分からじゃない気がして。
綺麗だったその髪が惜しい。

「あ！あまねだー！」

つかさの声が聞こえて思わず前を見すえる。

ニコニコと笑顔で俺たちに近付いてくる。俺の隣にいる彼女の表情は特に変わることは無い。
……知り合いだったっけ、この2人。

「…兄弟水入らずの方がいいかなあ」

どこか遠くを見つめてそう呟く彼女の手首を咄嗟に掴んだ。

「……一緒に、帰ろ」

「帰ろ！」

もう片方、折れている方の腕をつかさがぎゅっと抱きしめるように掴んだ。

微かに彼女の表情が歪んだ。

「つかさ、そっち…折れてるから」

「エ！折れてるノー？ごめんね？カタカナちゃん？」

「あ、はは」

どこか笑顔が引きつっていたのは気のせいでいいのかな。