みじかいゆめ。【地縛少年花子くん】 (ページ12)

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「土籠～」

「……なんですか、七番サマ」

訪れたのは土籠のところ。
あの子がもし死んでいるなら、というかここで死んだのなら本が残っているはずだ。

「アイカワA。
この子の本を探して欲しいんだけど」

「…七番サマがどうして藍川のことを知ってるんですかァ」

「ほら、最近噂の『とおせんぼうさん』っているじゃん、あれだよ」

そう言うと土籠はズレた眼鏡をかけ直してどこか悲しそうな顔をして本を探し始める。

「……七番サマ、藍川の様子は」

「ンー、消えてしまいたいって口癖。
あれって生きてる頃から？」

「さぁ、どうでしたかねぇ」

…………。
土籠、なんでそんなに回答を濁すかなあ。喧嘩でもしたいの？

「アイツが亡くなったのは最近ですよ、死因は確か…自害、でしたっけねぇ」

「自分で自分を殺したんだ、…なんで？」

「さァ、それまでは」

そうして数分後。
土籠は本を見つけたのか俺に見せるようにその本を低く掲げた。

「七番サマ、アイツを成仏させるのだけはやめろよ」

「……そうだね、コレはちょっと」

本に書いてあった内容、それは思ったよりも壮絶なものだった。

＿＿＿＿＿

「俺、知らなかったよ。
君が友達を守るために自分で死んだって」

ゆらり、と無反応のアイカワに『とおせんぼうさん』に近づく。

「なんでその名前がついたか、教えてあげよっか。
君が友達を守るためにとおせんぼうしたからだよ」

「っ、！」

微かに息を呑む声が聞こえた。

本に書いてあった内容はこうだ。
アイカワは嫌われる事で自分の存在を確かめていた、多分生前は今よりもっと不器用だったんだね。それ以外で自分の存在を確かめることが出来なかった。

自分を嫌わずに近づいてきたその子が居たから否定したんだ。最後は守ろうとして自分で自分を殺した。巻き込まないように、自分のせいで危害を加えられないように。

「俺は君を成仏させないよ」

「なんで、」

「見たくないの？君が命をかけてまで護った友達のその後。怪異にだって助けられることがあるんだよ、アイカワ」

初めて会った時と同じように頭を撫でた。

君はもう『とおせんぼうさん』になる必要なんてないんだ、善良な怪異として居ればいい。

「まあでも、まだ低級な怪異だから今のうちは俺が守ってあげる。この学園にはこわーい祓い屋がいるからね」

血塗れた制服や髪が綺麗な、元通りの色に変わる。

「花子くん」

「ん？」

「ありがとう」

俺だけのカンナギさん。