みじかいゆめ。【地縛少年花子くん】 (ページ2)

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笑ってマイヒーローページ2

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夕焼け色に染まる教室。

傾き始めた夕陽がカーテンを靡かせてまるでこっちにおいで、って誘い文句を言っているように見えて。

「柚木くんってさ、ほんとーに口下手だよね」

「……余計なお世話だよ」

「あはっ、確かに」

彼女は窓の縁に座って今にも落ちそうな勢いだ。

骨折した右腕に首からぶら下がっている白い三角巾と包帯がやけに目立つ。

「…そういえばそれ、いつからだっけ」

「ソレ？」

「右腕」

「んー、2日ぐらい前？
いやぁ、あれは流石に痛かったなあ」

痛かったなんていう表情じゃない、いい思い出とでも言うように笑っている。

くるりと方向転換して窓の縁から教室の床へと降りた彼女はにっこりと笑いながら俺の方を見た。

「よしっ、柚木くん帰ろっか」

「え、…なんで？」

まだ夕焼け放送も鳴ってない時間なのに。
鞄に教科書とか色々入れて本当に帰る準備をし始める彼女を見てなんとなく、自分も帰る準備を始める。

「そろそろ土籠センセ来ちゃう……あ、」

「帰るな」

彼女の声を遮ってそう言ってドアから姿を覗かせたのは土籠先生で。

話は変わるけど彼女は未来でも見えているのか。そう問い掛けたくなるくらい、彼女の予言はほぼ当たる。

「包帯巻き直すから、はいここ座れ」

「いいよー、自分で巻けるから」

「そう言って余計に骨折を悪化させたやつはどこの誰だった？」

「……えへ」

出た、あの笑い方。
彼女は誤魔化す時にあざとく笑う。俺はその表情がどうにも好きになれない。いつもみたいにヘラり、なんて効果音がつきそうな笑顔の方がまだ、接しやすいのに。

「あ、柚木くんは目瞑っててね」

「…なんで？」

「乙女の怪我の具合を見るなんて…柚木くんのえっち～」

「っ、…分かったよ、見なきゃいいんだよね」

目を閉じると時期にしゅるしゅる、と聞きなれた包帯が解く音が聞こえる。

彼女のせいで変なレッテルを貼られるのは困る。……というか、怪我を見たくらいで別に何も思わないよ。

「柚木くん、もうだいじょーぶダヨー」

そう言われて素直に目を開けると目の前にいる彼女に特別変わった様子はない。

強いて言うなら包帯が綺麗になったくらいで。

「じゃー、土籠センセありがとうございましたー。帰ろ、柚木くん」

「…はあ」

今日はいつもより早めに学校から出て、彼女と肩を並べて家の帰路を歩いた。