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「黒妖精、だろ?」
ナヴィが言葉を発す前に、今度はクロウが確信めいた声でそう言った。
言い当てられたことに驚いたのか3人とも目を見開いて何も言わなかった。
「当たりか?」
「……うん。そう呼ばれてたよ。誰かにね」
「誰か?」
どうやら3人は何も覚えていないらしく、自分たちが入っていた鍵のことも知らないらしい。
街に突如現れた、黒い生き物たち。
人が変わったかのようになったレノさん。
不思議な鍵から飛び出してきた、妖精。
そして、妖精のことを知っている様子のクロウたち──いったい何が……どうなっているの?
「あの!この鍵って、いったい何……?」
「……そっか。お前もやっぱ、知らねえか。
俺たちも似たようなもんだよ、鍵のこともこいつらのこともさっぱりだ」
「でも、さっき黒妖精って言って──」
そう。
クロウは黒妖精のことを知っていた。
なのに、どうして何も知らないような素振りなんだろう。
「……実はさ。お前の親父から、俺たちに手紙が届いたんだよ。
そこに黒妖精のことが書かれててさ」
クロウが持っている紙にはお世辞には綺麗な字とは言えない下手な字で『俺の娘たちを見つけて、黒妖精を辿れ』と書かれていた。
「え、待って。『俺の娘たち』って、でも──」
「なあ、さっきどうやってこいつらを出したんだ?
俺たちがどれだけその鍵をいじっても、ウンともスンとも言わなかったんだよな」
「あ、あれは私も何がなんだか!」
ただ呼ばれた気がして。本当にただそれだけで。
どうやって、なんて説明もできない。
「あの親父、お前に何か伝えてないのか?娘がいたなんて俺たちもすげえ驚いたんだけど。
お前が最後にあいつに会ったのは、いつ──」
「ちょっと待って!!」
思わず声を荒らげてクロウの言葉を制しすると、クロウは驚いたように目を開いて口は半開きになった状態で言葉を止めた。
その姿を見て、勢いよく言い過ぎたかも、と少し後悔。
「ごめんなさい。でも、本当に何も知らなくて。
そもそも、私の両親は小さい頃に事故で他界してるし、他に姉妹もいないし」
「他界!?」
「うん、だからたぶん人違い──」
そこまで言うと、後ろからそれを遮る声が聞こえた。
「いいえ、あなたの父親は生きています。それにあなたには妹君がいます」
「ランヌさん!?」
「……今まで黙っていて申し訳ありませんでした。
あなたの父親と妹君について、ゲルダさんから託された言伝があるのです」
ああ、なんだか頭がフラフラしてきた。
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作者名:ろい | 作成日時:2022年4月13日 22時