第1章 ページ3
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「…………着いた」
口から出たその言葉は現実味を帯びてはいなかった。
決して簡単では無かった月読みもこの日のために雑誌を買って来てもらい、予測をして独りでムーンロードを渡ってついに記憶の国・レコルドに足を踏み入れることができた。
「ギルド、連盟は、……」
どこだろう。右も左も分からない。
捕まえられる前に彼女に会わないと行けないのに。
ギュッと左手を握りしめていると、遠くの方で大きな音が聞こえた。
「連盟前で暴動が起こったって!」
「暴動!?また物騒な……」
連盟前で、暴動。
言葉が頭をグルグルと巡り回って、気分が悪くなりそう。
まさか、もしかしなくても。
嫌な予感がじわじわと私を追い詰めるみたいに、心に侵略していく感じすらする。
「エマ、……っ!」
探し求めている彼女は無事でいるのか、否か。
彼女が何者にも毒されないよう、そんな希望を持ってその場から走ってどこかも分からない連盟前へと向かった。
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初めて、こんなに必死に走った気がする。
そう思えるくらい、心臓はバクバクと動いていて、改めて生を実感する。
息が乱される。肩で息をすることなんて、今まであると思わなかった。
「あの、なんで私のこと知ってるの?」
「言っただろ。俺たちは、お前を探してたんだ」
しばらくの間、聞くことが許されなかった彼女の声も、可愛らしいその姿もそのままでほんの少しだけ安堵する。
「お前の親父からの言いつけでさ」
「??
親父って、私のお父さんは──」
ダメ。まだ、聞いちゃダメ。
まだなんかじゃない、ずぅっと聞く必要も知る必要も無いこと。
声を出せずにいると突然、銃声が響く。
「うおっ!?」
金の髪の彼が銃撃に飛び退き、その瞬間に何かを落とした。
虹色に白がかったような、鍵。
カラン、と高い音が聞こえて、目を細める。
あの鍵、どこかで……。
「あっぶねえな、誰だ!?」
「ふはははは!!!」
この場には不似合いな笑い声が聞こえてきて、思わずそちらを見つめる。
「誰だと聞かれたからには答えねばな!
ということで、エース!」
「オッケー兄さん!刮目して聞き遂げよ!
我ら兄弟、世界一の悪党になる男──闇夜の2人だ!」
兄弟(らしい)その2人の登場によって場の雰囲気が一瞬、乱される。
「さあ、行け!
今度こそ全てを闇に染め上げるがいい!!」
赤い髪の彼が例の銃の銃口を他所へ向けた。
体の熱が冷えていくのを感じるその感覚が絶望の合図だった。
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作者名:ろい | 作成日時:2022年4月13日 22時