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「よし、到着」

駐車場に停めて、サイドブレーキをかける。
シートベルトを外して一息つくと、
いつもは「 お疲れ様、ありがとう」と声をかけてくれる
彼女が寝息を立てていた。やけに静かだったのは
こういうことか。




自分が運転しているとき、助手席に座る彼女が
寝てくれるのは、とても幸せなことだと思う。

それだけ彼女にとって安心できるような空間で
あったということだから。


宝石を閉じ込めたような瞳は今は閉じられて、
すぅ、と音を立てて寝ている。
多分ずっと見てられるなと思ったのと同時に、
上杉の血管は血球の代わりに数字が流れてる、と
言われたくらいの俺でも、人を好きになると
こんなことまで考えてしまうのか、と自嘲しながら
彼女のシートベルトを外す。


あ、まだ花びらついてる。 起こさないように
そっと彼女の頬に触れ、指の腹に置いた花びら。
久々に触ったな。後部座席のゴミ箱に花びらを捨てて、
改めて彼女に向き合った。まつ毛なっげえ。

…起こすか? こんな気持ちよさそうに寝てるのに?
とりあえずベッドまで運ぶか、そう思ってドアを
ゆっくり開けようとしたけれど、その前に。


ゆっくり彼女に近づいて、頬にキスを落とす。


「んふふ」

ふわりと彼女が口角を上げて、笑った。
夢の中で彩が笑っている。 愛おしいな、そう思った。

もう一度、今度はその唇に口づけをした。

愛おしくてたまらない、誰よりも何よりも守りたい、
出来れば生を全うするその時まで、そばにいたい。
そんな存在の彼女が、笑顔でいてくれますように。

「おやすみ、天使さん」

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作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/miking08081/  作成日時:2020年2月13日 21時

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