ヨルノ街、ヨルノ月。

陸片 ページ11

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side : ryuji


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臣の居ない夜。



いつもの浜辺で 一曲歌い終えて

気持ちよくなってうんと伸びをして

後ろを振り返る。










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もう そこに誰の姿も無くて。














自分の "もしかして" を確信に変えたくて

少し足早に 防波堤を登った。












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この浜辺が好きだった。







歌が好きだった。








俺がここで歌うことに それ以上の理由なんて必要なかった。










海に声が溶けていくのが好きで

どこまでもどこまでも声が進んでいくのが好きで



単身 この湾岸地区に移り住んで







＿＿＿＿篤志さんに出会った。










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湾岸のJ.S.B.







彼はそう呼ばれていた。

相方＿＿＿＿敬浩さんと共に。









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ユニットといっても


特にステージをやったりするわけじゃない。







ただ好きな時に 好きな場所で 好きな歌をうたう。







それだけなのに 彼らの歌には 力が有って



聞き惚れた人たちが 少しずつファンになって

そうやって 彼らの名前は人伝にまた広まっていく。




俺もそのひとりだった。










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でも ある日突然 彼らの姿を見なくなり



そして 後を追うように またふたり

海沿いで 想いの込もった歌をうたう人たちが現れて







"彼らが 二代目だ"






そんな噂が少しずつ広まって


そのふたり＿＿＿将吉さんとネスミスさんは

篤志さん達と同じようなスタイルで 歌をうたっていた。









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やがて 俺は偶然か必然か 臣と出会って


ふたりして J.S.B.に憧れて

誰に聴かせるわけでもなかった。

ただ、波長の合う臣と一緒に歌うのが たのしかった。









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だから





突然目の前に現れた

篤志さん 敬浩さん 将吉さん、ネスミスさんに


突然授けられた

J.S.B.の 三代目










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驚いた。



でも







俺たちのスタンスは

J.S.B.のスタンスは 変わらない。






好きな歌を
好きな場所で
好きな時にうたう。









まだ 今は

きっと4人の足元にも及ばないけれど






時々 俺たちの歌に気が付いて足を止めてくれる人。





そういう人に 届くようにうたいたい。









＿＿＿＿彼女の様に。



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