BTSの長男の日常短編集 (ページ9)

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サイン会にて　3 ページ9

「謝ってください。」

本当は「謝れ!」て言いたいけどここはサイン会の会場だ。そんな空気がさらに悪くなるような事は言えない。

「ジョングガに謝ってください。ジョングガの努力を知らないあなたにそんなことを言う資格は無い。」

自分でも驚くほど冷え切った声が出た。

「あなたの前の女性と話していたことを聞いていたならわかると思いますが、ご飯が大好きなジョングガが、ご飯が喉を通らないことがありました。中学生で親元を離れ辛い練習生生活を送り見事デビュー。しかし当時もなんでマンネがセンターなんだ、でしゃばるなということをたくさん言われ、レコーディングで声が出なくなって苦しんだこともありました。今も昔もそういうことを言われないように、皆さんの期待に応えられるように血の滲むような努力をしている人にそんな事は言わないでください。」

JK「ヨンジュニヒョン…。」

会場が静まり返り、視線が僕たちに集まる。それに耐えきれなくなったのか目の前の女性が声を上げる。

AM「あ、謝ればいいんでしょ、謝れば！ごめんなさい!」

望んでいた謝罪とは違ったがこれ以上は無駄だろうと思ったから、顔も見たくなかったしもう連れて行ってもらった。

女性の姿が見えなくなるとみんなが集まってくる。サイン会は一時中断だ。一度控室にまで戻った。

JN「ヤー、ヨンジュナ。大丈夫?治療しなきゃ。」

JM「ヒョ、ヒョン。血が…血が…。」

「ヤー、ジミナ。大丈夫だから。」

そうは言うけど痛い。痛いけどジョングガの心の痛みよりは痛くないはずだ。安心させるように怪我をしていない左手で頭を撫でてあげる。するとドンッと言う衝撃が来て下を向くとジョングガが目に涙をためながら抱きついてくる。

JK「ヒョン…ヒョン。ごめんなさい、僕のせいで…。」

「それは違うよジョングガ。怪しいと思って気をつけていたのに防げなかったヒョンが悪い。それに僕はマッヒョン。マンネのジョングガを守るのは当たり前だよ。それよりごめんよりもありがとう聞きたいな。」

JK「ヒョン…、ありがとうございます。」

大丈夫、大丈夫と背中を叩いてやる。そうこうしているうちに救急箱を持った医療スタッフがやってきて応急処置を始める。幸いたいした怪我ではなく少し深めに指を切っただけだった。といっても5本の指全部なんだけどね。これじゃあサイン書けないや。そう思って僕は苦笑した。