Ninth story ページ9
キスをした。本人の許可も取らず、付き合ってる訳でもないのに。10年前の恋人に。
「っ…」
Aは何事も無いかのようにスヤスヤと俺の腕の中で寝ている。
「っは…、俺、馬鹿だろ…。」
ついさっき口付けたその唇を優しく指でなぞると、小さく声を出すA。可愛くて思わず微笑んでしまった。
「はぁ…起きたら謝らないかんな…」
Aをベッドに寝かせ1人呟く。
あの頃と変わらない黒髪を優しく撫でると、Aは少し笑った。
「…A。」
そう小さく呟いてみる。でも、Aは当然だけど寝たままで、俺のこの複雑な心境なんか関係ない様な顔をしていた。
「はぁ…、俺も寝るか…。」
そう思ってAの横に寝転がった。そして優しく抱き締めて目を閉じた。
・
・
・
Aside
目が覚めて薄ら目を開けると、目の前は真っ暗だった。なんで？と思って体を動かすと、目の前に見慣れた顔が見えた。
『わっ、』
吃驚して大きな声を出してしまい、ハッとして口を抑えた。
『い、ふくん…』
ぐっすり眠っているいふくん。あの頃と変わらないサラサラな髪が顔にかかっていた。
きっと私を抱き締めていたであろう腕。出来心で持ち上げて、彼の掌を自分の頭の上に乗せてみた。暖かくて、大きい彼の手。あの頃、良く撫でてもらった。私が、撫でてもらうのが好きだって言った時なんか、ずっと、ずっと撫でてくれた。
『いふ、くん…ぎゅぅ…』
彼が寝てるからか甘えてしまう。彼に抱き着いて胸に顔を埋める。
『…ふふ、』
こういう言い方はあまりしたくなかったのだけれど、言うならば元彼。そんな彼に抱き着いて、一緒に寝て…いいのだろうか。会社の人でも、彼の事が好きな人はきっと山ほどいる。そんな人達にバレたら、きっと全員が敵に回る。
「ん…」
『っ！』
彼が身を捩らせた事に驚いて彼から離れた。彼は目を擦って眠たそうにしている。それでも次第に目が開き始めた彼は私を見て、嬉しそうに微笑んだ。
「んぁ…Aだぁ〜ぎゅ〜」
『んぇ、え、あ、ちょ、』
「ぎゅ〜…A、あったかい…」
私を腕の中に抱いて嬉しそうに笑う彼。そんな彼を見ると昨日の様に冷たくする気にもなれず、抱き返してしまった。
そして、
『いふくんも、暖かいよ。』
そう言って、彼の胸に顔を埋めた。すると彼はあの頃と変わらない手つきで、優しく私の頭を撫でて嬉しそうに笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Luna@スランプ気味(プロフ) - 彩結さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると嬉しいです！ありがとうございます！ (2023年1月31日 21時) (
レス) id: d192e913df (このIDを非表示/違反報告)
彩結 - 初こめ失礼します！久しぶりにirisタグで作品漁ってたら出てきて読んでみたらすっごい良かったです！！それと､２周年おめでとうございます！ (2023年1月31日 19時) (レス) @page23 id: de9627e524 (このIDを非表示/違反報告)
Luna@スランプ気味(プロフ) - あおさん» コメントありがとうございます！展開迷子だったんですがなんとかここまで持ってこれました…wこれからも頑張ります！ (2023年1月11日 22時) (レス) id: d192e913df (このIDを非表示/違反報告)
あお - 更新ありがとうございます、ガチで神作だなって思いました……(誰目線)更新待ってます、頑張ってくださいっ(*´꒳`*) (2023年1月10日 22時) (レス) @page20 id: 6422e385c4 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - *祐霧*さん» コメントありがとうございます！嬉しいです！ありがとうございます！ (2022年11月27日 14時) (レス) id: d192e913df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Luna | 作成日時：2022年8月13日 19時
