Sixth story ページ6
彼の口から発せられたその一言。何も返せなかった。
「…悪い…?」
「んーん。寧ろ甘えて欲しくらい。」
「甘えないけどね」
「えぇ〜…ええやん別に」
「良くない」
素直に甘えたいって言えない自分にちょっとだけムカついた。もういっその事甘やかしてくれればいいのに。
「…私帰る。」
「帰さんよ?」
「何でよ」
「1人で帰すの心配やから。」
「大丈夫だって。」
「ダメ。」
どちらも譲らず結局私が折れて彼の残業が終わるのを待つ事にした。
少し響くタイピング音。タイピングが怖いくらい早い。でも私も早いからちょっと負けてないか気になった。負けてたらきっと、負けず嫌いの私はタイピングの練習をするんだろう。今頃タイピングやってどうするんだか…という感じではあるが。
「んー終わった」
「お疲れ様」
「そういう事は言ってくれるのになぁ」
「頑張った人に労りの言葉は当たり前」
「元彼に塩対応は当たり前なの?」
「…さぁ。」
そう言ってはぐらかすと彼は頬を膨らませて拗ねたように怒った。
「何でもいいから帰るよ」
「はぁーい…」
「送ってってくれるんじゃないの?」
「いや、俺ん家。」
「…は?」
その数文字が頭の中で数秒リピートされた。俺ん家…?え、いふくん家…?
「え、やだ、」
「そんな拒絶せんとってよ…」
「無理」
「何もせんから」
出たな、「何もせんから」この言葉への信頼度は10年前にとっくに0になっている。
「嘘だ。あんた10年前私に何したか覚えてる?」
「えー…何したっけ?」
「…家帰ってる途中で雨降ってきてあんたん家に行ったの。そしたらねぇ、親がいないのをいい事に私の事押し倒したでしょうが!」
「あー、そういやそんなこともあったなぁ」
「何その反応!私結構びっくりしたんだからね!?」
「まぁでも、結局何もしてないやん?」
「押し倒した時点でアウト」
そうバッサリ切ると彼は酷ーなんて言いながらケラケラ笑った。
「でもなー、元はと言うと…雨に濡れた服のまま何も気にせず俺の部屋に入ってきた、Aが悪いんやで?」
悪戯気な笑みを浮かべた彼はそう言った。彼は少し私に近ずいた。
「っ…それは…」
「可愛ええなぁ」
ニコニコと笑いながらそう言って私の頭を撫で始めた彼。この人は私の頭を撫でるのが好きだ。良く撫でられた。でも、嬉しかったから悪い気はしなかった。
その事を思い出すと少し笑みが零れた。
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Luna@スランプ気味(プロフ) - 彩結さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです!ありがとうございます! (2023年1月31日 21時) (レス) id: d192e913df (このIDを非表示/違反報告)
彩結 - 初こめ失礼します!久しぶりにirisタグで作品漁ってたら出てきて読んでみたらすっごい良かったです!!それと、2周年おめでとうございます! (2023年1月31日 19時) (レス) @page23 id: de9627e524 (このIDを非表示/違反報告)
Luna@スランプ気味(プロフ) - あおさん» コメントありがとうございます!展開迷子だったんですがなんとかここまで持ってこれました…wこれからも頑張ります! (2023年1月11日 22時) (レス) id: d192e913df (このIDを非表示/違反報告)
あお - 更新ありがとうございます、ガチで神作だなって思いました……(誰目線)更新待ってます、頑張ってくださいっ(*´꒳`*) (2023年1月10日 22時) (レス) @page20 id: 6422e385c4 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - *祐霧*さん» コメントありがとうございます!嬉しいです!ありがとうございます! (2022年11月27日 14時) (レス) id: d192e913df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Luna | 作成日時:2022年8月13日 19時