それでも愛していたかった…XANXUS 【※ボスが微クズ】【死ネタ】 ページ33
バタン、と荒々しく扉が開かれる。
目をやれば、やはりあの人が不機嫌そうに帰ってきた。
――私の知らない香水を匂わせて。
彼は女遊びが激しく、何人もの愛人なんて普通にいる。
これはヴァリアーに入隊すれば誰しもが知る事実だ。
それは私という恋人がいたとしても変わらない。
彼から告白され私が受け入れたとはいえ、彼自身にとっては女を囲うようなものなのだろう。
スクアーロやルッスーリアの憐れみのようで同情するかのような視線にも、もう慣れた。
ベルフェゴールのおどけるような心に突き刺さる言葉に、諦めを知った。
当の彼は世で恋人という存在である私に見向きもせず、自室に荒々しく戻っていった。
いつからだろうか。他の女の人との関係を隠す事もしなくなったのは。
結局は、私がいてもいなくてもどうだっていいのだ。
だから私は――死ぬことにした。
このまま何処か遠くに逃げたっていいのかもしれないけど、この気持ちに嘘は吐けない。
押し殺していつか思い出ごと褪せらせるよりは、胸に秘めたまま死にたい。
愛には満たなかったこの恋という感情を綺麗なままで、自らの手で、終わらせたい。
それに、私は疲れてしまった。
嫉妬に泣く事も出来ずに笑顔を貼りつけることに、大丈夫だと嘘を吐くことに疲れてしまった。
愛人を抱く光景を目撃して哀しい、だなんて独りで泣いて晴らした。
それでもいつかは私をみてくれると淡い希望を抱いて生きてきた。
生きてきた、つもりだった。
彼は机に置いた遺書に気づくだろうか。
恨み辛みなんてないけれど、自分の気持ちを正直に記したつもりだ。
どのみち伝えることは永劫ないのだし。
こめかみに銃口を押し付ける。
死なんて怖くない。
強いていうならば、あの人の特別になれなかったことだ。
いつも孤独に炎を燃やす彼を支えたかった。
あの人が最後まで私をみてくれなかったことに、泣きたかった。
大きく息を吐き、私はもう伝えられない言葉を一つ、自らの口に出す。
「Addio,XANXUS……愛してた」
そして、発砲。
ぐらりと体が傾いて視界が暗転する刹那、最期に見えた漆黒の、紅は、もし、か し て――
「紫苑！！」
とある、愛されたかった女の告白
(それから私がどうなったかを私は知らず)
(全ての女の人と関係を絶ったあの人が、毎日私の墓へ花を手向けに来ることも、私は知らない)
終わり
ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←扉…XANXUS 【※読む人を選びます】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
misyou.go2(プロフ) - 桜もちさん» こちらこそありがとうございます(*´艸`) (2017年4月16日 21時) (
レス) id: ffd771d2d5 (このIDを非表示/違反報告)
桜もち(プロフ) - そういうことだったんですね、わかりました。改めてとても素敵なお話でした！ (2017年4月16日 20時) (レス) id: 1907d70f44 (このIDを非表示/違反報告)
misyou.go2(プロフ) - 桜もちさん» あ、読んで頂けてありがとうございます！注意文については、ボスが故人になっているので、苦手な人には苦手らしいということで……【死ネタ】とした方が良かったのでしょうが、夢主が死んだわけではない(死にかけではあった)ので一応…… (2017年4月16日 19時) (レス) id: ffd771d2d5 (このIDを非表示/違反報告)
桜もち(プロフ) - 新たに更新されたお話読みましたが、読む人を選ぶとはどういうことですか？よ、読んでしまってよかったでしょうか(汗)切なくてとても感動しました！いつも応援してます。 (2017年4月16日 18時) (レス) id: 1907d70f44 (このIDを非表示/違反報告)
misyou.go2(プロフ) - 闇の道化師さん» いえいえ〜読んでくださってるだけでも至極光栄ですから〜(*´▽｀*) (2017年4月14日 17時) (レス) id: ffd771d2d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：misyou.go2 | 作成日時：2016年8月12日 21時
