【REBORN】短編集

片想い…マーモン　【甘】《リク》 ページ16

「マーモン！抱っこさせて！」

「いいよ。5分につき1ユーロね」


そう言うと嬉々として僕を抱くのは紫苑、彼女だけだ。
ベルだって抱きはするけどぶちぶち文句を言いながら、だからね。

僕はマーモン。
赤ん坊の姿をしてるけど、呪いのせいでこうなっただけで本当はもっと大人なのさ。

僕は早く元に戻りたい。
そうすれば彼女に僕は意識されるだろうか。

僕は紫苑が好きだ。
意識したのは最近で、僕をぬいぐるみか何かと思ってる彼女にモヤモヤする日々だ。
だけど彼女の手を、体温を感じられるこの距離を愛惜しく思うのも事実で――

嗚呼、この姿をこれ程憎むのは自分でも珍しいよ。


「私マーモン好きっ！だからずっと傍にいてね」

「ム、君がお金払ってくれるならね」


僕だけが好きなのが悔しくて、ついそう言ってしまう。

さっきのだって照れ隠しに過ぎなくて、貰ったお金は彼女が寝静まった後こっそり財布に戻す。
勿論、彼女の頬にキスをするのも忘れずに。

それでも天下の暗殺部隊幹部かい？
僕から金を請求させない人間なんて、君くらいのものだよ。


超能力を使える僕でさえも、君の心は分からない。
でも使おうとも思えないのは、やっぱり君が好きだからなんだ。

ふよふよと浮きながら廊下を進む。
僕の視線の先には紫苑がいて、重そうな書類の束を抱えている。

僕は重そうなそれを、サイコキネシスと云われる力を使ってそっと支えた。


「あっ！ありがとう、マーモン！」

「どういたしまして」


礼を言う君の笑顔が可愛くて赤くなってしまう。
フードを被っていて良かった……見られでもしたら、僕は呪い以前に羞恥で死んでしまうからね。


「お金、とらないの？」

「これくらいは安いものさ。
　…何、とってほしいの？」


おずおずと聞いてきた彼女にそう言えば、ブンブンと手を振って「まさか！」と笑う。

そんな仕草も愛しくて、つい紫苑の頭を撫でてしまう。
意外と柔らかいくせ毛の髪の毛は、僕の小さい手とよく馴染んだ。


「マーモン…？」

「何でもないよ。髪に何か絡まっていたからね」


嘘だよ、何も絡まってない。
君に触れたい気持ちを誤魔化したんだ。

嘘をホントに、本当をウソに。

僕は本当に霧だね。


お金は僕を裏切らない。
だから僕はお金だけを信用してる。


けど、君なら信用しても……いいかな。





金≦君
(だから早く、僕を好きになってよ)

過保護…ツナ＜黒＞　【激甘】《リク》→←変貌…ツナ　【激甘】《リク》

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