【REBORN】短編集

不運の中の幸運…スクアーロ視点　【学パロ】　↑の続き ページ2

俺は紫苑が好きだ。

そう自覚したのは何時だったか…それ程までに、俺とあいつは共にいた。
元々家が近所で、あいつは俺の手を引き、連れまわしていたのを覚えてる。


小学校に入学してからは、照れくささと思春期からか邪見に扱った事もあったが、
それでもあいつは変わらず俺に接してくれた。

だが俺の１つ年上のあいつは、中学に入ってからはよく御曹司の話をするようになった。
それまでは他愛無いテレビ番組だのゲームの攻略法を話していたのにだ。

オシャレになんて興味すらなかったあいつが、女らしく化粧してきた日にゃ本気で吃驚したなぁ。
明るく笑うあいつが、年頃の女らしくはにかんで、今まで見てきたどの女より可愛かった。

中３になって成功したと喜んでいたあいつに、俺も心から祝った……胸の内のコレを封印して。

だから…だからこそ俺は身を引いて、あいつを譲ってやったのに。


高１となった放課後、日直日誌を職員室に届けに行った帰り、あいつとすれ違った。
あいつは押しに弱かったから、どうせ書類とか当番を押し付けられてたんだろう

だが、俺とすれ違ったあいつは泣いていた…――正確には無意識に涙を流していた、と言うべきか。

あんな紫苑なんて見た事がなかった。
笑ったり泣いたり、コロコロ表情が変わるあいつの、あの感情ごと押し殺したような顔なんて。

しばらく呆然としたがあいつの走り去っていった先で見たのは、
あの御曹司と……見知らぬ女が手を繋いで歩いてくる姿だった。

そうか、それならあいつのあの顔にも納得がいく。


―――…ならばもう、いいんだなぁ？もうコレを押し殺さなくて、いいんだなぁ……？


「貰ってくぜぇ、御曹司」


俺はすれ違いざまに御曹司の耳元で囁く。
訝し気に振り向く御曹司も、つられて俺を見たあの女もどうでもいい。

恐らく、俺の目は獰猛な鮫のようにギラついている筈だ。

あいつが置いて行った鞄を担ぎ、すり寄って来る女共を無視して俺は土手へ向かう。

予想通り、あいつはいた。
泥だらけでもこんなに愛しいと思うのは、惚れた弱みなのだろう。


俺はそっと、小さく震えるあいつの傍に近づいた。



お前が俺の心を盗むなら、俺はお前の未来を奪おう
(覚悟しとけぇ)
(あいつを思い出せないくらいに、愛してやるから)








Title by 不在証明 様

花畑…沢田綱吉　【甘】→←不運続きの厄日…XANXUS　【学パロ】【悲恋】

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