357.久しぶりの人影 ページ8
＜セフン＞
「…ふぅ」
久しぶりだ。一人で自分を慰めたのは。
性 欲なんてそんなある方じゃないし。湧くこともあるけど、人に対しては湧かなかったから、そんな機会もなかった…
のに。
あの、Aの、えっちな夢を見て、俺は…。
「…いや、マジで？」
興奮した、って、いうのか…？
たまたま…抜いてないと、朝勃ちとかしやすいらしいし…そのせい、だよな、たぶん…うん、そのせいだ。
だって、今まで、一緒に寝ても、風呂に入っても、こんなことにはならなかったんだぞ。
まさか…今更、Aを、性的対象として見るなんてこと…。
ガチャッ
考え事をしていると、事務所の玄関の方で、扉が開く音がした。
来客？
この前チャンイーシンさんって人が来たばかりなのに。こんな頻繁に来るのめずらしいな…なんて思いながら、事務所の方へ歩く…
「っ…！」
そこには、見慣れた、久しぶりの、人影があった。
「…こん、にちは」
俺が来たことに気付くと、その人影は、そう言った。
「あの…相談が、あって…」
ドクン、ドクン、と、心臓の音がうるさい。
「どういう顔、すればいいですかね…」
はっきりと見えた彼女の顔は、今にも泣きそうな顔をしていた。
「…A…」
そこにいたのは、ずっと、夢に見るほど、会いたいと心の奥底で思っていた、存在。
「…ただいま、です、セフンさん…」
一筋、つうっ、と涙を流しながら、笑う彼女。
その姿を、見て。
「あのっ…ごめんなさい、勝手に出て行った、くせに、帰ってき、っ！」
ガバッと、俺はAに抱き付いた。
「…おかえり」
＜A＞
久しぶりの、我が家。
『相談屋
あなたの相談になんでも乗ります(気が向いたら)』
そんな怪しげな看板が、迎えてくれる。
…どういう顔を、されるだろう。
もし、嫌そうな顔をされたら、すぐに、出て行こう。
そう決意して、震える手で、ドアノブを回す。
キイッ…と、扉を開けて。
一歩、二歩、と、足を踏み入れる。
部屋の中心まで来たところで、恐る恐る顔を上げると。
そこには、ずっと会いたかった人がいた。
私を見て、驚いたように固まっている。
言おう、準備してた、こと。
「あの…相談が、あって…どういう顔、すればいいですかね…」
『…どういう顔をして、帰ればいいんですか…』
『さぁ。聞いてみれば？相談屋さんに』
オッパに言われたように、そう言ってみた。
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作者名：LUKE | 作成日時：2022年12月15日 3時
