378.気付いてくれて ページ19
.
私とセフンさんは、吸い寄せられるようにその絵画のもとへ歩いていく。
それは、一輪の花の絵。
「セフンさん…この花、なんでしょうね？」
「ん？あぁ…この花は、リナリアっていう花だね」
「へぇ…花、詳しかったんですか？」
「ううん。その花言葉はね、”この恋に気付いて”、らしくて…ずっと、Aが俺に、思ってきたことでしょ？」
…あれ、この場面、なんかどこかで見た気がする。既視感がある。
「そう、ですけど…なんか今の場面、夢で見た気がします」
「へぇ。お告げでもあった？」
「うーん…」
少しモヤモヤしつつ、この絵画の説明文を見る。
『作品名:リナリア
気付いてくれて、ありがとう』
そう、短い文が書いてあった。
「…とっくに、セフンさんは私の気持ち、気付いてたのにね」
私はそう呟く。
「…うん。でも…見ないふりをしてきた。関係性が変わるのが、怖かったから。でも、変わらなきゃいけないのは俺の方だった」
私はセフンさんの方を見る。
セフンさんは、真っ直ぐに、リナリアの絵を見ていた。
「向き合うよ、ちゃんと。Aの、俺への気持ちに」
凛々しく整った眉毛にスッと通った鼻筋。綺麗な横顔。
ううん、外見の綺麗さだけに、見惚れてるわけじゃない。
「…セフンさん、大好きです」
「俺も」
この人を好きになって、よかった。
この真っ直ぐな横顔を見ていると、そう、心から思えた。
私も、向き合わなきゃ。
…どうすれば、いいんだろう。
どつやったら、もっとセフンさんを、理解することができるんだろう…。
「A、そろそろ行こう」
「あ、はい」
セフンさんに促されて、私たちはリナリアの絵から離れた。
「あ〜、なんか来てよかった」
「ふふ、そう言ってくれて嬉しいです」
別に乗り気じゃなかったセフンさんだけど、結果的にそう思ってくれたみたいで。あのリナリアの絵のおかげだ。
特別展示室を出ると、臨時的に置かれた机の上に、なにやら作品がいくつか飾ってあった。
「あれも、作品ですかね？」
「そうじゃない？」
近寄って、作品たちを見てみる。
『◯×芸術大学 卒業制作』
「あぁ、大学の卒業制作だ」
「大学…」
大学…
『今はね、大学で准教授をやってるんだよ』
「あ！！！！！」
「ちょ、Aちゃん静かに…！！」
「あ、す、すいませんっ…」
つい大声を出してしまった。
あるじゃん、セフンさんを理解する方法…！
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 58人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LUKE | 作成日時：2022年12月15日 3時
