371.生かされている ページ12
＜セフン＞
『俺は…こんなにAのことが好きなのに、どこか、Aの好きとはすれ違う。それが、苦しい。だから、一緒にいたくない。辛いから』
『…本当に、それだけか？』
『何が』
『Aちゃんといて湧き上がる感情は、辛い、だけか？』
考えてたよ。ジュンミョニヒョンにそう聞かれて、ちゃんと。
それで、離れてみて、考えて、分かったんだ。
今の俺は…この子に、生かされている。
身体も、心も。
ちゃんと、伝えないと、ダメだよな。
Aの気持ちも聞かずに、一方的に俺の気持ちを押し付けて…
この家を出て行ったのはAの方だから、Aが俺から逃げたように見えるかもしれない。
でも、逃げ続けていたのは、俺の方だ。
「俺…Aのことが、すごく、すごく、大切で…大好きで…でも、どこか俺の好きは、Aの好き、と、すれ違う…それが、苦しい…辛い」
辛い、っていうのは、こういうこと。これも、ほんとのこと。
「でも」
俺は顔を上げる。
Aの、綺麗な目と、目が合う。
ドクンッと、熱が上がる。心臓が、動き始めるような感覚がした。
「離れてみて分かった。Aがいないほうが、もっと、辛い」
さっき見せられて高くなった請求書の数字は、まるで、Aに会えなくて高まる俺の気持ちを数値的に表しているようだった。
「…幸せ、なんだ。Aといると。Aが俺にくれるものは…たぶん、愛ってやつで…それが、心地良い。
俺のそばに、いてほしい」
あぁ…やっと、言えた。
『セフン、さん…愛って、何ですか？』
A、分かったよ、俺。
それは、君がくれるもので…
って、あ。また、俺の一方的になってる…
「…あ、今更、だよな…すごい、ほんと、自分勝手で、その…いっぱい、傷つけて、なんて、謝ればいいか…その…っ！！」
ふわっと、Aの香りに包まれて、ギュッと、心ごと、体が抱き締められる。
「A…」
俺も、ゆっくりAの身体に腕を回す。…小さいな。
「セフンさん…私、ずっと、この時を待っていたんだと思います」
徐に顔を上げて、Aがそう言う。
「もちろんですよ！ずっと、ずーっと、一緒にいさせてください！」
ニコッ、と微笑むA。
君がそう言うなら、俺は…
実の親に捨てられたのも、
養子になって義理の両親に愛されなかったのも、
ヤバい集団にボコボコにされたのも、
美術商で盗みをして捕まったのも…
全部、君に愛されるためだったって、思ってもいいかな。
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作者名：LUKE | 作成日時：2022年12月15日 3時
