370.欲しかった言葉 ページ11
.
「…その顔、心当たりあるんだろ」
ジュンミョニオッパが持って来た電気代の請求書。そこにはいつもより高い数字が書かれていて。
その原因を聞かれたセフンさんは、右上の方を見てとぼけるような表情をしている。
「なんだよ。言ってみろよ」
「いやぁ、ごめんごめんー次から気をつけるからさーAも帰って来たことだしー」
そう言って請求書を奪い取ろうとするセフンさん、がっちりと離さないジュンミョニオッパ。
「どーせ、Aちゃんがいなかったからテレビ消し忘れだの暗いの怖くて眠れないから電気つけっぱなしだの、そんな感じだろっ！」
ジュンミョニオッパがそう言うと、ピクッとセフンさんは反応して、動きを止めた。
「ったく…言っただろ、素直になれって」
ジュンミョニオッパはそう言って請求書から手を離すと、腕を組む。
「それで、Aちゃんの気持ちは聞いたのか？ちゃんと話し合ったのか？」
私の、気持ち…そうだ、私は、セフンさんに自分の気持ち…まだ、ちゃんと伝えてない。
たとえ、セフンさんが、恋愛ができないもしても。
「…セフン、さん、私、」
言いかけると、ジュンミョニオッパが私を制止するような動作をする。
「俺も、まだ聞いてないことがある。俺、言ったよな、お前に。Aちゃんといて湧き上がる感情は、辛い、だけなのかって」
私といると、辛い…！？そんなこと…初めて聞いた…。
「…ちがう」
セフンさんはゆっくりと口を開く。
「俺…Aのことが、すごく、すごく、大切で…大好きで…でも、どこか俺の好きは、Aの好き、と、すれ違う…それが、苦しい…辛い」
私のことが大切だと、何度も、セフンさんはそう伝えてくれた。
けれどその度に、どうせ私のことなんか女の子として見てない、と、私だって、悔しかった。
「でも」
セフンさんは顔を上げる。
「離れてみて分かった。Aがいないほうが、もっと、辛い」
そう言ったセフンさんは、困ったような顔をして微笑んでいた。
「…幸せ、なんだ。Aといると。Aが俺にくれるものは…たぶん、愛ってやつで…それが、心地良い。
俺のそばに、いてほしい」
それは、セフンさんから、欲しかった言葉。
そして、私も言いたかった言葉。
「…あ、今更、だよな…すごい、ほんと、自分勝手で、その…いっぱい、傷つけて、なんて、謝ればいいか…その…っ！！」
途端になよなよと喋り始めるセフンさんに、私はギュッと抱き付いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 58人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LUKE | 作成日時：2022年12月15日 3時
