375.傷心中のヒョン ページ16
＜セフン＞
Aは…ベッキョニヒョンといて、楽しかった？
どんなことをしたの？
デートには行った？
ヒョンも、Aの手料理を食べたの？
そういうことは…もう、しちゃった？
色々、本当は聞きたい。
けど、ここは素直になるポイントじゃないな、と直感的に思った。
「Aがいるから。もう大丈夫」
「それ、私のセリフですよ…」
ふふっ、と笑うA。
Aが笑うと、なんだろう。安心する。あったかくなる。
笑っていたAの目が、閉じたり、少し開いたりしはじめた。
もう眠さの限界なんだろう。
「A、おやすみ。明日美術館行くんでしょ？早起きしなきゃね」
「はい…びじゅつかん、行って…かふぇ、行って…それで…」
ニヤニヤしながら、どんどんAの目が閉じていく。
「おやすみ。良い夢見てね」
できれば、俺の夢ね。
よしよし、と頭を撫でると、すーすーと寝息が聞こえてきた。
…さて。
嫌だけど…やらなくちゃいけないことがある。
えっと、Aのスマホ…
あの人に、お礼を言わなきゃ。
お礼なんて…言われたくないかもしれないけど。
『…なんだよ。情けない俺を揶揄いたいのか』
「違うよ…ちゃんと、ベッキョニヒョンとは話をしたいと思ったんです」
電話に出たベッキョニヒョンは、やっぱりいつもの元気が無くて、空元気って感じで。
『話って、何だよ。Aちゃんは俺よりお前を選んだの。そんだけじゃん』
「…なんか、さ。こういうこと言うの、違うってわかってるけど…ありがと、ベッキョニヒョン」
『だーから、煽るなっての！俺は当て馬じゃねぇ！俺の人生の主人公は、俺！！』
わーわー喚いてるけど、やっぱ無理やり元気出してるように聞こえる。
『…それに、俺は、Aちゃんに、セフンが恋愛できるかもしれないってこと隠してた。だからこんなことになった。全部自分のせいだから』
「でも、最後は言ったくれたじゃん。Aの気持ちを尊重したくれたじゃん」
『…まー、それは…俺、優しい男だし』
「うん。ベッキョニヒョンは、ほんとに優しくてお人好し」
『そうだよなぁ、俺は優しいよなぁ、なんで優しい俺が浮気なんてされたのかなぁ！！』
昔の恋愛を引っ張り出してくる時は、弱ってる時だって、ミンソギヒョンか誰かが言ってたな。
「ヒョン…俺、Aを幸せにするよ」
「何。結婚するみたいなこと言うなよ。まだ俺にもチャンスあるんだからな」
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作者名：LUKE | 作成日時：2022年12月15日 3時
