夢の中で逢える人【wtnb】

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この時くらいから既に俺は一つの仮説を立てていた。

江面さんは、もしかしたら俺の夢の中で生み出された人じゃなくて実際に現実世界で生きている人なのではないか、ということ。

夢であるからどんな物が出てきたところで自分の想像力が豊かなんだなで終わるけど、どうにも江面さんはそういうものではない気がする。ただの感だけど、現実世界の江面さんの夢と俺の夢がなんやかんやあって交わったというのが今の所の考え。まぁどっちにしろ夢には違いないから深く考えたところでどうにもならないんだけど。


「渡辺さんはお仕事何されているんですか？」
「俺はQuizKnockっていうウェブメディアで働いてる。YouTubeでクイズ系の動画に出演してるんだけど…」
「えっっ………もしかして本物のこうちゃん…です…？」
「まぁ偽物ではないから本物ってことになるかな」
「ﾋｴｯ」

「変な声出てたけど大丈夫？」
「いえ、あの、まさかご本人様だとは思わなくて、すいません」
「ご本人様って(笑) 江面さん面白いね」


俺の正体を知ってからの江面さんが挙動不審すぎて面白い。もっとこう…嬉しそうにするとかかと思ったのに、どちらかというと「嬉しい＜困惑」って感じ。


「嬉しすぎて死にそうです…」
「いや死なないで？！夢だし死ぬとかそういう概念ないけど！」
「渡辺さんが尊すぎるのが悪いんですよ…」
「俺のせい？！」
「罪名は尊すぎ罪です」
「何それ！(笑)」


やっぱり「嬉しい＞困惑」だった。本来ならファンの子との距離は一定に保たなきゃいけないんだろうけど、ここが夢の中っていう特殊すぎる環境ということと江面さんなりに一線を引こうとしているのもあって感覚が変になる。夢だしいいかって。

でも夢だからこそ、いつか覚めなきゃいけないわけだからさよならなんてすぐにやってくる。


「QuizKnockのおかげで仕事で病みそうだったときもつらいときも頑張ることができました。ありがとうございます。これからもたくさんの動画や記事を楽しみにしています！」
「…なんか、他のメンバーじゃなくて俺しか聞いてないのがあれだけど…QuizKnockを代表して返事するね。こちらこそいつも応援してくれてありがとう。これからも応援よろしくお願いします！」


江面さんもそろそろ夢から覚めそうな感覚があるのか、最後に感謝の気持ちと応援してますという温かいメッセージをくれた。

夢から覚めた後でもこの夢を覚えていたらみんなに伝えようと思ったところで俺の意識は浮上した。

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