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久部くんのバイクにまたがり、紙切れに書かれた住所を目指すと、ある一軒家に辿り着いた。
そこには庭を埋め尽くす程のゴミ袋の山があった。いわゆるゴミ屋敷というやつだ。
「あ、Aさん久部くん!」
縁側でご老人と将棋を打つ所長が、私達の姿を見つけ、手を挙げた。
そして私達は何故か外にまではみ出したゴミの塊を、塀の中へと戻す作業を手伝わされていた。
「これはみ出してると苦情来ちゃうから」
苦笑いの所長に、久部くんが「誰なんですか?」と問う。
「将棋の師匠。ゴミ屋敷の屋敷さん」
「どういうお知り合いで?」
「保管庫の身元不明の遺骨あるでしょ?あの一番奥が、屋敷さんの奥さん。身元が分かったのに、受け取りを拒否して一年半」
遺骨の受け取りを拒否するなんて、珍しい人もいるんだなと思いながら、ゴミを拾い上げていく。
「夫婦仲悪かったんですか?」
「その逆」
所長の言葉から、奥さんが大切すぎて、亡くなった事を受け入れられないのだろうと察した。
すると家の中から「言うこと聞く部下いるじゃねぇか」とご老人が顔を出す。
「彼らだけですよ」と所長は苦笑いを浮かべた。
その日の仕事を終えた夜、私はデスクに座り
まだ飽きずに防犯カメラの映像を、食い入るように見ていた。
するとそこへシャワーを浴びたであろう
中堂先生が、オフィスへ戻ってきた。
首にタオルをかけ、濡れた髪からはまだ雫が滴っていた。
「何か写ってたか?」
「いえ、何度見てもやっぱりダメですね」
ずっと同じ体勢でいる事に疲れ、私は少し伸びをする。時計の針が進む音だけが、私と先生しかいないオフィスに響く。
あまりにも犯人へ繋がる収穫がない為、PC画面から目を離し、先生へと目線を向けた。
「何見てる」
ソファで気怠げに座る先生に、「聞いてもいいですか」と前置きする。
「前に先生が、"お前を誰にも渡したくない"って言ってたあれは、どういう意味なんですか?」
あれからずっとモヤモヤしていた気持ちを吐露すると、先生は癖っ毛の隙間から見える目を丸くした。
「…伝わってなかったか」
先生はそう呟くと、おもむろに立ち上がり
私の方へとゆっくり足を運ぶ。
そして、私を椅子ごと180度回転させ背もたれをグッと背後のデスクに押し付ける。
背後にはデスクが、前には長身を少し屈ませた先生が私の逃げ場を無くす。
「せ、先生?」
「知りたいんだろ?どういう意味か…」
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青龍 葵(プロフ) - 母親を殺した真犯人は誰なのか…今後の展開、中堂さんと恋人同士になった2人に甘い部分があるのか?とか思いながら更新が待ち遠しいです! (2018年3月20日 6時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - 青龍 葵さん» もう最終回ですね〜終わってしまうのが辛い!小説の方もこれから急展開を迎えますので2人の行く末を見守って頂けたらと思います (2018年3月16日 21時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - いよいよ今日でドラマ最終回!結末がどうなるのか気になりますが小説の最後(完結)も気になります。完結まで、まだまだ先かと思いますが無理のない更新で頑張って下さい! (2018年3月16日 17時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
Soll(ソル)(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。知識の浅い素人の書く文章ですので、これからもそういった点が出てくると思いますが、少しでも楽しんで頂けるよう努力していきます (2018年3月15日 7時) (レス) id: 55764b7fd6 (このIDを非表示/違反報告)
まる - いつも楽しませて頂いてます!差し出がましいことを申しますが、細菌とウイルスは別物です!気にしないで読むつもりだったのですがどうしても気になってしまいコメントしました (2018年3月15日 2時) (レス) id: 8a313f8dce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soll(ソル) | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2018年2月18日 19時